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■シートアジャスター機能でドライバーの体格差を吸収
●ドライビングポジションをきめ細かく調整、電動化も進む
安全運転のためには、正しい運転姿勢をとることが大切です。適正な運転姿勢をとることによって、操舵や加減速時に車両の姿勢が乱れても、ドライバーの視線と身体の揺れが抑えられて安全が保たれます。
正しいドライビングポジションとそれを実現するシートアジャスター機構について、解説していきます。
●正しいドライビングポジションとは
正しい運転姿勢を保つためには、3つのポイントがあります。
・加減速や操舵時のようなクルマの姿勢が不安定な状況でも、腰回りがふらつくことなく身体を安定させる。
・長時間座り続けても痛くならないように、座面の一部だけに体重の負荷が集中しないように面圧を分散させる。
・上半身をサイドサポートの張りなどを使って安定させることは必要だが、腕は自由に動かせて操舵が容易にできる。
以上を実現するためにシートの役割は重要ですが、ドライバーの身体には個人差があります。それを解決するために、運転席のシートにはアジャスター機構が付けられています。
●重要なシートアジャスターの役目
さまざまなアジャスター機構がありますが、通常はシートスライドによるシート前後位置の調整とリクライニングによるシートバックの傾きの調整の2つの機構が装備されています。
・シートスライド
ペダルを踏み込んだ時に膝が多少曲がる状態で、おしりとシートに隙間ができないように前後方向を調整
・リクライニング
ステアリングを両手で握った時に肘が多少曲がる状態で、背中がシートバックにつくように傾きを調整
クルマによりますが、さらに精細な調整ができる機構が付加されています。
・シートリフター
さまざまな体格のドライバーに対応できるように、シート全体の高さを調整
・ランパーサポート
背骨の形状に合わせるために、シートバックの腰にあたる部分の張り出し量を調整
・サイサポート
太ももを支えて疲労を軽減するため、シートクッションの前部を上下に調整
・サイドサポート
コーナリング時でも姿勢が左右に傾かないように、シートバックの側面の張り出しの幅を調整
最近は手動式でなく、電動式が増えています。また、シートポジション状態を記憶するメモリー機能付きのシートがあり、ドライバーが替わってもワンタッチでポジション設定ができます。
●レースカー専用のバケットシートとは
上半身も下半身も両側からしっかりホールドするシートに、バケットシートがあります。ホールド性を追求したレースカー用のバケットシートは有名ですが、レース専用なので使い勝手や快適性が悪く一般車には使えません。
スポーツタイプのクルマでは、ホールド性に優れ、日常的にも使えるようにしたバケットシートが採用される場合があります。リクライニング機構を持たないフルバケットシートと、ホールド性をある程度妥協して利便性を高めたリクライニング式のセミバケットタイプの2種があります。
走行中の前後Gや横G発生時にも身体と視線のブレを抑えられるため、スポーツ走行には不可欠なシートです。
どんなに先進的な安全技術を装備しているクルマでも、適正なドライビングポジションで運転しなければ、せっかくの安全技術の性能が発揮できません。また疲れやすくなり、最悪の場合は腰を痛める場合もあります。
シートアジャスター機能を使って、適正なドライビングポジションで運転することが、安全運転の大前提です。
(Mr.ソラン)