目次
●荷室の広さはN-BOX、使い勝手はタント、巧みな収納のスペーシア
巨大な車室内空間を持ち、使い勝手には徹底的にこだわって作られているこの3台、デザイン性、収納力、そしてシートアレンジなど、それぞれに面白い特徴があります。本記事では、3台のパッケージングや車室内の作り、そして荷室の使い勝手などの内装を中心に比較し、それぞれの長所・短所を指摘していきます。
[index]
■フロントシートのアレンジはタントがナンバーワン!
■荷室の使い勝手は、王者N-BOXに軍配!
■荷室の荷物にアプローチしやすいのはやっぱりタント!
■丸洗いできるシート下ボックスのスペーシア、工夫された収納!
■フロントシートのアレンジはタントがナンバーワン!
軽スーパーハイトワゴンの魅力のひとつとして、豊富なシートアレンジが挙げられます。3台とも前席のシートバックを後ろへ倒すと、後席シートクッションまでフラットにすることができ、軽自動車とは思えない、巨大な荷室空間を作ることができます。
中でも、フロントシートのアレンジが特徴的なのが「運転席ロングスライドシート(世界初)」を装備するタントです。
N-BOXにも、助手席が570mmスライドできる「助手席スーパースライドシート」はありますが、運転席を最大540mmスライドできるのはタントだけ。ステアリング右後ろにあるスイッチを押して、シートスライドのロックを解除することで、運転席を後方へ大きくスライドさせることができます。
さらに、助手席を前方へずらせば(助手席も380mmスライド可能)、運転席に座ったまま、左へ「クルッ」と向きを変え、後席に移動したり、座ったまま後席シートの子供の世話をすることもできます。この運転席シートスライドは、タントの大きな魅力です。
またタントの代名詞「ミラクルオープンドア」は、改めて見ると、大きな荷物の出し入れにはたしかに便利ではありますが、大きな荷物を積み込む機会がないのならば、N-BOXやスペーシアでも十分に感じます。むしろ、良く使われそうなのは「運転席ロングスライドシート」のほうでしょう。
■荷室の使い勝手は、王者N-BOXに軍配!
荷室開口部の寸法は以下の表の通り。トップの項目に黄色を付けていますが、ご覧の通り、N-BOXがすべて優れている、という結果となりました。
荷物の載せ下ろしに影響する荷室入口の地面からの高さは、タントとN-BOXで130mmも違います。また開口部の幅や高さも最も広く、パッケージングに非常に優れた設計がされている、といえるでしょう。
また、3台とも、後席シートバックを前へ倒すことで荷室はフラットになりますが、後席シートバックの厚みによる傾斜が少なく、最も低くフラットになるのはN-BOXでした。後席シートクッションが床下へ潜り込んだあとの高さが低く、より背の高い荷物を入れることが可能です。
これはホンダお得意の「センタータンクレイアウト」の恩恵です。そのため、自転車のような背の高い荷物を乗せるのは、N-BOXが有利、といえるでしょう。
■荷室の荷物にアプローチしやすいのはやっぱりタント!
ただし、荷室内の荷物の整理整頓には、ダイハツの「ミラクルオープンドア」が非常に便利です。荷室から助手席まで伸びるような長めの荷物、例えばスキーの板やサーフボード、本棚の様な荷物の場合には、タントは圧倒的に便利です。
ちなみにN-BOXとスペーシアは、荷室側から後席シートの前後スライドをさせることができますが、タントは荷室側からスライドさせることができません。
ダイハツのエンジニアの方曰く、「タントの場合、「ミラクルオープンドア」があるために、荷室側から後席シートを前へスライドさせて荷物をのせるよりも、助手席スライドドア側から作業するケースが多い。スイッチ追加分の余計なコストをかけない判断をした」そう。スライドドアをサッと開ける方が動作は楽になるでしょうが、他車の動作とは異なる手順となるので、慣れるまでは苦労するかもしれません。
■丸洗いできるシート下ボックスのスペーシア、工夫された収納!
スペーシアにある助手席シートクッション下のケースは、N-BOXやタントにはないGOODポイントです。このケースは取り外してバケツとしても使うことができますので、汚れた物を入れておいたりする際に便利です。またスペーシアの派生車となるスペーシアギアは、荷室の床がプラスチックとなっており、アウトドア等で水分や汚れがついても、サッと拭きとることができます。こうした、アクティブな使い方を想定した装備を備えているのは、スペーシアのメリットです。
■まとめ
3台ともに細かな配慮がされていますが、大きく分けると、荷室の広さはN-BOX、使い勝手はタント、巧みな収納のスペーシア、といったところでしょう。次回は、ハンドリングや直進性、乗り心地、音振性能といった、走行性能についてレポートをしていきます。
(自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)