レンジ一族の末弟、グランドツーリングに挑む。ランドローバー・レンジローバー・イヴォークSE D180 前篇【プレミアムカー定点観測試乗】

こんにちは、花嶋言成です。今回はランドローバーのコンパクト・ラグジュアリーSUV、イヴォークのディーゼルモデルがテーマです。

ジャガー・ランドローバー・ジャパンは3リッターV6(258ps/600Nm)および2リッター直4(180ps/430Nm)からなるディーゼルエンジン搭載車のラインナップを積極的に進めており、ジャガーで3車種、ランドローバーで全6車種を導入しています。最高出力では同等排気量のガソリンモデルに若干劣るものの、最大トルクで大きく上回るほか、燃費は2リッターの場合WLTCモードでおよそ3割良好とあって、これまで両ブランドで共通の欠点だった航続距離、燃料コストやCO2排出量を大きく改善しています。

かつてのディーゼルエンジンは、振動や滑らかさ、サウンドや高回転時の伸びといった点でガソリンエンジンに大きく劣ることから、高級車には不向きとされていました。しかし1990年代以降、ヨーロッパのメーカー・サプライヤーを中心に低燃費で人気の高いディーゼルエンジンを磨き上げようという機運が高まり、さまざまな改良を加えてきた結果、高級車だからこそディーゼルを選ぶ、という意識に変わってきています。

ランドローバー・レンジローバー・イヴォークSE D180

その後、排ガス浄化性能をめぐる疑惑が一部のメーカーで浮上したこともあり、若干欧州市場での人気は低下しているものの、それだけにいまの日本市場では各メーカーが積極的に販売拡大を目論んでいるのです。

筆者は現行ジャガーXFのディーゼルモデル、つまりこのイヴォークと基本的に同じエンジンを持つクルマを所有しています。違うのは縦向き(ジャガー)か横向き(イヴォーク)かの搭載方法と、ATが8段か9段か、そしてボディがアルミか鉄かといった部分です。乗り慣れたエンジンを備えるイヴォークはどんな個性を持っているのか? 今回は東京〜香川往復のロングトリップを敢行し、燃費性能や快適性、自動運転支援装置の完成度などを含めじっくりチェックしていきます。

■機能的かつ斬新でバランスの取れたインテリア

新しいイヴォークのコクピットに収まると、まるでコンセプトカーを路上に引っ張り出したかのような第一印象を受けました。ピアノブラックに光るデコレーションパネルと、マットなアルカンターラのステアリングやシフトノブが、同じブラックながら好対照をなし、スウェードクロスを張ったヘッドライニング(約22万円のオプション)が斬新な高級感を主張。そこへ絶妙に散りばめられたアルミのアクセントが光ります。

新しいマルチメディアシステムTouch Proはセンターコンソールの上下にタッチパネルを配置、メーターパネルにナビゲーションを表示できることと合わせて、3つのパネルを自由に使ってオーディオや車両設定の変更を行うことが可能です。

前席の横幅が広いことも特別感を高めています。たまたま試乗車を旧型イヴォークと並べてみる機会があったのですが、新型は似たような全幅ながらドアパネルが外へ張り出しており、一層ゆとりある空間作りに成功しているのです。

夜のインテリア。ステアリングホイールはスムーズレザーとスウェードの両方が用意されている。

■4気筒ディーゼルとは思えない静粛性

エンジンを始動させての嬉しい驚きは、4気筒ディーゼルユニットがアイドリングから非常に静かなこと。始動の瞬間の身震いを除けばガソリンエンジンとほとんど区別がつかないほど、振動も少なく抑えられています。

わがXFと比べてもその差は明らかで、ジャガー・ランドローバーの方によると「最近のランドローバーは、ジャガーより静かに作ってある」のだそう。状況に応じて硬さを変えるアクティブエンジンマウントの設定が非常にうまく煮詰められているのに加え、エンジンルームの遮音を入念にしてノイズを抑え込んでいるのでしょう。

しっかり作り込まれた代償として、このイヴォークの車重は車検証上で1970kg(前:1160kg、後:810kg)にも及び、これはジャガーXFディーゼルを210kgも上回るのですが、キビキビ変速する9段ATとのコンビネーションの妙もあって、街中で動力性能に不足を感じる機会は皆無でした。

横置き搭載される1999ccディーゼルユニットは、132kW(180ps)/4,000rpm 430Nm/1,750-2,500rpmを発生。

■その名のとおり快適なコンフォートプログラム

試乗車は、減衰力可変ダンパーを備え走行状況からさまざまなプログラムを選べるアダプティブダイナミクスをオプションで装着。タイヤ&ホイールも20インチ(前後235/50)にアップグレードされていましたが、コンフォートプログラムで走り出した乗り心地は、アグレッシブな外観とは裏腹にかなりソフトなタッチです。

バネ下の重さこそなんとなく伝わってきますが、足が非常によく動くうえ、ボディが堅牢なこともあって細かな路面の起伏を意識させません。

市街地での印象は非常に良かったイヴォーク・ディーゼル。後篇ではロングクルージングに挑戦しつつ、より細部まで観察していきます。

(花嶋言成)