インテリアのコンセプトは対照的!「カッコ良い系」のロッキー、「オシャレで明るい系」のクロスビー【ロッキー&クロスビー・その2】

●使い勝手のトータルバランスで優れているのはロッキー

SUVとしての使い勝手はロッキーの方が上に感じた。
雰囲気重視のクロスビーは、比較的、使い勝手が悪く感じた。

■インテリア比較で分かった使い勝手の大きな違いとは?

軽自動車を長年作り続けているダイハツとスズキ。限られた空間を最大限に活用する、ということを長年追及してきた両メーカーのクルマの使い勝手は、やはりどのメーカーよりも優れているように感じます。

配慮の行き届いた収納エリアや室内空間の広さ、荷室の使い勝手など、ロッキー、クロスビーともに驚くほどのキャパシティを持ち合わせています。

今回はパッケージングや室内の作り、そして荷室の使い勝手など、インテリアを中心に徹底比較しました。

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■インテリアコンセプトは対照的!
■荷室の使い勝手は「ロッキー」が圧倒的に良い!
■インテリアのトータルバランスで優れるのはロッキー

■インテリアコンセプトは対照的!

ブラックを基調としたロッキーのインテリアは、直線を生かした立体的に見えるデザインです。エアコン吹出口やダッシュボード周囲、そしてドアインナーノブには、シルバーの加飾が装備されており、最新のSUVデザインを取り入れた「カッコ良い」を狙った造形です。

表皮はプラスチック製ですので、質感はそれなりですが、水分や汚れがついても「サッ」と拭きとれるため、割り切って考えれば、非常に使い勝手がいい、と言えます。

ディスプレイオーディオは今後のトヨタ共通となる。

また、ダッシュボード上に設置された、9インチ大型のディスプレイオーディオ(メーカーオプション税込9.9万円~)は非常に見やすく、またスマートフォンと連携することでナビゲーションの役割もこなせるために必須の装備だといえるでしょう。

スマホと簡単接続できるのはありがたい。

対するクロスビーは、曲線を基調としたインテリアで、柔らかい印象を感じられるデザインです。

ベージュで光沢のあるインパネは運転席側から助手席まで伸び、クラシカルな印象を与えてくれます。その印象に反して、シルバー加飾で無骨なデザインのエアコンのスイッチや、シフトノブ周りのおもちゃっぽい加飾など、せっかくの車両イメージとあわずギャップに感じてしまうのは気になる所です。

クロスビーは収納の多いインテリア。ホワイトのダッシュボードは光沢がある。

アイポイントが高く、またガラスエリアも広くて死角が少ないクロスビーには、更に安全確認を考慮した「全方位モニターカメラ」が装備されています。

中でも周囲を立体的に確認できる「3Dビュー」はポイント高いです。その映像を表示する7インチナビモニターは、最新のロッキーの9インチモニターと比べてしまうと小さくは感じますが、ダッシュボード上の高い位置にあるので見やすく感じます。

ロッキーと比べると小さなモニターのクロスビー

2台ともにナビ操作の機能性や使いやすいスイッチ、運転視界の広さなど、良く考えられたインテリア設計がなされています。最新の直線基調のカッコ良い系デザインを好む方には「ロッキー」、オシャレで明るい雰囲気を好む方には「クロスビー」がおススメです。

■荷室の使い勝手は「ロッキー」が圧倒的に良い!

汚れには強いが、荷室までの高さがある。

クロスビーには後席を前後にスライドさせる機構がついています。荷室容量はリアシート後端で最大124リットル、シートを前方にスライドさせた状態で最大203リットル、シートを前倒しした2名乗車時で520リットルの荷室容量が得られます。

防汚タイプのラゲッジフロアとなっていますので、ちょっとした汚れがついても「サッ」と拭きとれば掃除ができるのはメリットです。また、取り外しができて丸洗いも出来るラゲッジアンダーボックスには、汚れたシューズやグッズをそのまま入れ込むことができます。

後席背もたれを倒せば相当な広さとなる。プラスチックで汚れにも強い。
荷室下にあるラゲッジケースは取り外して丸洗いできる。

気になるのは、地面から荷室までの高さが800ミリもある所。ロッキーは710ミリですので、その差90ミリ。重い荷物の積み下ろしの際にはかなり効いてくる差といえます。

もう少し高さを下げられなかったものか。
700ミリは非常に使いやすい高さ

対するロッキーは、後席使用時(デッキボード下段モード)に369リットル、アンダーラゲージも含めると449リットル(4WDは407リットル)程にもなります。高さが変更できるデッキボードは、荷室の開口部とフラットになる上段と、125ミリ下の下段の2段階に設定ができます。

また、ラゲッジ下のある収納エリアは、クロスビーの様に取り外すことはできませんが、想像よりも深く彫り込まれているため、背の高い荷物を縦に積むような使い方もできます。

間口も広いロッキー。カーペット素材のため、汚れは付きやすい。
後席背もたれを倒すと、フルフラットになる。
荷室の床面は、2段の高さから選べる。
床下には深いスペースがある。

クロスビーは「ハスラー」がベースのため、フロア高と共に荷室の開口高さも上がってしまった、と推測します。ハスラーベースのままでリア開口部を広げてしまうと、走行中にリアから振動が生じたり、バックドアの建付けが悪くなり、きしむ音が発生したりと、不具合が生じることがあります。

その分の車体剛性を上げてリカバリするのは至難の業。バックドアがもともと広いタント派生の「ロッキー」の方が、基本設計は優れている、いえるでしょう。

※VDA方式…ドイツ自動車工業会が定めた、200×100×50mm(容量1リットル)のテストボックスをラゲッジスペースに詰め込み、その入る個数を容量としてカウントする指標

■インテリアのトータルバランスで優れるのはロッキー

「クロスビー」は、デザインを優先したパッケージングのため荷室が犠牲になっている部分があります。またクロスビーは、前席と後席の間が広いことで、後席の広さはロッキーよりも上回っていますが、SUVの本来の役目「荷物をたくさん載せて大人数で出かける」といったシーンだと、ロッキーの方が上手なパッケージングといえます。

どちらを選ぶかは、ユーザーのクルマの使い方によりますが、筆者としては、ラゲッジルーム下にある大空間に驚かされた「ロッキー」をおススメします。

次回は、この2台の「走り」について、具体的に「良い点、気になる点」に分けてレポートします。

(自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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