甲乙つけがたし! 排気量1.0リットルターボのコンパクトSUV。キャラクタの立ったデザインが最大の魅力【ロッキー&クロスビー・その1】

●流行デザインのロッキーと、クラシカルなデザインのクロスビー

2019年11月登場したロッキーは大人気となっている。
クロスビーは2016年登場。すでに3年を超えてはいるが、未だ人気の一台だ。

■ロッキーとクロスビーはどういったクルマなの?

全幅1700ミリ以下・全長4000ミリ以下の超コンパクトSUVジャンルに、昨年11月に登場したダイハツロッキー/トヨタライズ。自販連によると、2019年12月の販売台数はロッキー3,514台・ライズ9,117台と、カテゴリで一気にTOPへと躍り出るなど、売り上げが好調です。

ロッキー/ライズ登場前の超コンパクトSUVの代表格といえば、2016年に登場したスズキクロスビーでしょう。12月の販売台数は1,283台と、勢いは落ちてきてはいますが、デザインセンスと商品力は高い1台です。

人気爆発中の「ダイハツロッキー」、デザインセンスの塊「スズキクロスビー」。今回はこの2台を取り上げ、3回にわたって比べながら、詳細にチェックしてまいります。

★ダイハツロッキー G 2WD
車両本体200万2000円+付属品合計29万5801円(10%税込)

★スズキクロスビー HYBRID MZ
車両本体218万5700円+付属品合計37万5870円(10%税込)

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■車幅1700ミリ以下のコンパクトボディに凝縮された、秀逸な内外装デザイン
■小回り性能は2台ともに素晴らしい!どちらを選んでも正解
■エンジンはどちらも1.0Lターボ、キャラクタ付けが異なり甲乙つけがたい

■車幅1700ミリ以下のコンパクトボディに凝縮された、秀逸な内外装デザイン

ダイハツロッキーのボディサイズは3,995 ×1,695 ×1,620(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は980 kg、ホイールベースは2,525 mm。対するスズキクロスビーは、3,760×1,670×1,705(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1,000 kg、ホイールベースは2,435 mm。全幅と全長はほぼ近しいこの2台ですが、デザインのテイストが大きく異なります。

全幅1695ミリはギリギリ5ナンバーサイズを守った。
ボディシェイプやA、Bピラーのブラックアウトなど、どことなくRAV4に似ている。
現代風のテールランプやすっきりしたバンパーなど、現代のSUV デザインの王道といえる。
どことなくクラシカルなクロスビー。ミニクロスオーバーに似ている?
切り立ったAピラーがクラシカルな雰囲気。キューブの様にも見える。
テールも可愛い。ただし荷室の入り口までの高さがあるため、ロッキーよりも荷物は積みにくい。

ロッキーのエクステリアは、つり目型ヘッドランプに大径グリル、大きなタイヤにブラックのフェンダーモールと、流行のデザインを合わせており、なんとなく「ミニRAV4」のような方向性でまとめられています。

対するクロスビーは、丸目ヘッドランプに立ち上がったフロントウィンドウ、シルバーのバンパー、フェンダーは大きいが小さめのタイヤ、全体的に丸身を帯びたボディラインなど、「MINIクロスオーバー」を彷彿とさせるテイストが、入れられています。

インテリアにもそれぞれ特徴があります。ロッキーは、ステアリングホイールのスイッチやインパネのエアコン吹き出し口やダイヤルなど、どこかトヨタの面影を感じます。RAV4や最新のトヨタ車で見たようなデザインがあるのは、デザインの共用化をしているかもしれません。

対するクロスビーは、艶のあるオフホワイト色のインパネパネルやドアトリムなど、インテリアにもクラシカルなイメージを織り込んでおり、「センス良くオシャレ」にまとめられています。同社の軽自動車「スペーシア」譲りの収納エリアも多数あり、使い勝手が高いのは「クロスビー」の方といえるでしょう。

プラスチック多めだが、シンプルにカッコ良いインテリア。
光沢のあるダッシュボードなど、オシャレが高い。

■小回り性能は2台ともに素晴らしい!どちらを選んでも正解

最小回転半径は、ロッキーは5.0メートル(16インチ仕様は4.9メートル)、クロスビーは4.7m。駐車場の切り返しやUターンのシーンではクロスビーの方が小回りは利きますが、ロッキーも相当に小さく転回ができますので、どちらを選んでも困ることはないでしょう。

ちなみに両車の違いの要因はタイヤサイズにあります。ロッキーは195/60R17(又は195/65R16)の大径タイヤ(φ665.8ミリ)を装着し、デザイン性と走行性能を高めています。タイヤ幅もいっぱいの195ミリですので、コーナーでの安定感や直進性は、ロッキーの方が高いです。

グリップ、乗り心地は十分のタイヤ。

対するクロスビーは175/60R16が標準タイヤ(φ616.4ミリ)と小径です。そのため、コーナリングや直進時の安定感はロッキーほどはありません。とはいえ、タイヤが小さいことでばね下の重量が軽減されていますので、乗り心地やロードノイズなど快適性が高く感じられるのは、クロスビーでした。

1トン近い車重に175タイヤだとやや心細い。

■エンジンはどちらも1.0Lターボ、キャラクタ付けが異なり甲乙つけがたい

ロッキーに搭載される直3気筒1.0リットルインタークーラーターボエンジン(98ps/14.3kgm)は、980kg(※2WD Gグレード)という軽量ボディには、十分な動力性能を与えてくれます。加速も非常にスムーズで、アクセルペダルを踏み込む量に応じて滑らかに速度が上がっていきます。サウンドも軽快であり、ラバーバンドフィールもさほど感じません。燃費は22.8km/L(JC08モード燃費:2WD Gグレード)。

1.0Lターボは力強い。

対するクロスビーには、直3気筒1.0リットル直噴ターボエンジン(99ps/15.3kgm)を搭載。1,000kg(※HYBRID MZグレード)とこちらも軽量ボディですので加速力も十分あります。なお、スタート時の押し出しが強いのはクロスビーのほう。マイルドハイブリッドのシステム「ISG(モーター機能付発電機)」によるアシストが存分に利いているのでしょう。燃費は20.6km/L(JC08モード燃費:フルタイム4WD)。

クロスビーの1.0Lターボエンジン。

試乗時の実燃費は2台とも同じレベルでした。2台を比較して感じたのは、シーケンシャルシフトとエンジン回転計に4種類のマルチディスプレイを与えてエンジンに存在感を持たせようとした「ロッキー」、静かで滑らかな6ATを与えてエンジンの存在感を消そうとした「クロスビー」という違いです。このあたりは、好みによって選ぶことになりそうです。

■まとめ

ベビーRAV4といえる出来のロッキー。
ミニクロスオーバー似のクロスビー

大流行の「RAV4」デザインをオマージュし、最新技術をおり込んでいても200万円前後に価格を抑えた「ロッキー」「MINI」を彷彿とさせるクラシカルなデザインをまとい、エンジンは静かにかつパワフルな特性を与えて快適な移動を目指した「クロスビー」。

驚いたのは、発売後2年経っても色あせない「クロスビー」の方(※2017年12月発売)。流行を追わないデザインのメリットが出ているように感じます。

次回は、両者のインテリアの特徴や、シートの座り心地、荷室の使い勝手について、レポートしていきます。

(自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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