■3代目Cクラス(W204)くらいのボディサイズ
メルセデス・ベンツ Aクラスに加わったFFを基本とするAクラスセダンは、同ブランドに期待する上質さや、快適性が担保された良作です。
「上質なコンパクトセダン」という商品特性は「サイズ=車格」という固定概念がある中、なかなか成立しにくく、アウディはA3セダンでフォーマルの中にもスポーティさを感じさせるシャープなキャラクターラインを与えています。
一方のAクラスセダンは、キャラクターラインをドアミラーとアウタードアハンドルの中間に1本、下側にも1本を走らせながらも、面の構成で上質感をアピール。スポーティムードはそれなりでも退屈なエクステリアデザインではなく、Aクラスハッチバックと同様に、鮫のような顔つきを彷彿とさせる最新マスクをまとい、小さいながらも存在感を放っています。
ボディサイズは、全長4560×全幅1800×全高1430mm。ホイールベースは2730mm。狭い場所でも取り回ししやすく、駐車場に制約があるケースでも比較的対応しやすいのも魅力。マンションの立体駐車場などに停めていて、同クラスの輸入車セダンを探している人にはAクラスセダンの追加は朗報といえそうです。
■高い静粛性はセダンならではの美点
試乗したのは車両本体価格485万円の「A250 4MATIC Sedan」。搭載される2.0L直列4気筒ターボは、224PS/5500rpm・350Nm/1800〜4000rpmというアウトプットで、車両重量は1580kg。超スムーズな変速と適度なダイレクト感を抱かせる秀逸な7速ATの仕事ぶりもあり、街中からバイパス、ワインディングロードまで軽快な走りを披露してくれました。
動力性能にはまったく不満はなく、中・低速域の加速から高速域のパンチ力も十分に堪能できます。急勾配が続く山道でも力強い加速を容易に引き出せます。「A250 4MATIC Sedan」は、「100:0」〜「50:50」の可変トルク配分式4WDで、高いスタビリティと適度なアジリティを兼ね備えているのも長所でしょう。少し飛ばしても安定感のある走りが引き出せます。
2.0L直列4気筒ターボは224PS/350Nmというスペック
乗り味は硬めではあるものの、適度な重厚感を伴ったしっとりした乗り心地も美点です。後席にゲストを迎えても快適かどうか気を使う必要はなさそう。さらに、ハッチバックよりも1枚上手と思わせる静粛性の高さも魅力です。
リヤに大きな開口部を持つハッチバックでも現行Aクラスは、メルセデスの名に恥じない遮音性は確保されていますが、リヤバルクヘッドを持つセダンはさらに静か。また、高い剛性感によりコーナーでのフットワークも良好で、ロングドライブでより疲れにくいという利点も享受できそうです。
後席はセダンでも閉塞感はあまり感じさせません。身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後ろには、膝前にこぶし2つ分、頭上にこぶし1つ分ほどの余裕が残ります。さらに、前席座面下に足が入り、後席は座面前後長も長めに取られています。後席は床から座面までの高さが少し低く感じられますが、筆者であれば長時間でも疲れにくそうです。
なお、トランク容量も420Lと大容量といえる広さ。後席背もたれは「40:20:40」の分割可倒式ですので、長い荷物などにも対応してくれる実用性を兼ね備えています。ファーストカーとして使える居住性や積載性はもちろん、流行のSUVをファーストカーとしている人もフォーマルで心地よいセカンドカーとして魅了されそうな雰囲気に満ちています。
(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、メルセデス・ベンツ日本)