日産自動車が次世代の遮音材技術「音響メタマテリアル」を公開【CES 2020】

■1/4の軽量化が可能な夢の遮音材

日産自動車は、夢の遮音材ともいえる新技術である「音響メタマテリアル」を「CES 2020」に出展すると発表しました。

以前お伝えしたように、車両の静粛性の向上と従来の1/4の軽量化も可能にする新しい遮音材である「音響メタマテリアル」は、2019年の「ニッサン インテリジェント モビリティ テクノロジーツアー」で初公開された技術です。

日産自動車 音響メタマテリアル 日産自動車が開発した遮音材「音響メタマテリアル」

同遮音材は、周期的な格子構造とフィルムを組み合わせたシンプルな構造により、音が伝わる際の空気の振動状態を材料が制御し、音の透過を抑制することで、ロードノイズやエンジン音など、車内に入ってくるクルマ特有の騒音を広い周波数帯(500-1200Hz)で効果的に遮ることができます。

開発エンジニアの三浦 進氏は、音に対してタイミングよく膜が震え、震えることによって音を効率的に跳ね返すというのが特徴と説明しています。

●車両の軽量化が可能

現在、この周波数帯の遮音には、主にゴム板などの重い板材が使われていて、「音響メタマテリアル」は現状の素材よりも重量が約4分の1と軽量でありながら、同等の遮音効果を実現するとしています。

日産自動車 音響メタマテリアル 「音響メタマテリアル」の開発を担当するエンジニアの三浦 進氏

さらに、同遮音材はシンプルな構造のため、量産化が実現すれば従来の遮音材に対して同等あるいはそれ以上の価格競争力を実現する可能性も秘めているそう。そのため、将来的には車両重量への影響やコスト面から、これまで遮音材の使用が制限されていた車種にも幅広く活用することが期待できるそうです。

日産自動車 音響メタマテリアル 音響メタマテリアル

日産は、2008年頃、当時すでに電磁波領域で高感度アンテナなどに活用されていたメタマテリアルの技術に着目し、それ以降、同技術の音響波への応用を目指し、少人数で研究開発を推進してきたそう。

今回、音響メタマテリアルの基本原理を解明することで、高い遮音性能を持つ遮音材の開発に成功しました。

車両の軽量化は、燃費や電費の向上による環境負荷の低減はもちろん、より安心して運転を楽しめるクルマ作りにも貢献します。また、静粛性を向上させることで、移動時間をより快適で有意義なものへと変えることも可能になるとしています。

日産の総合研究所で「音響メタマテリアル」の開発を担当するエンジニアの三浦 進氏は、遮音材の開発について「クルマ特有の「ゴー」というロードノイズが課題であり、EVによってエンジン音がなくなり、残るロードノイズをいかに消すかということも長年の課題だった」としています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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