■独身の方から子どもがいるファミリー層まで対応する広さと実用性
モジュラープラットフォームの「MQB」を使って仕立てられたフォルクスワーゲンのT-Crossは、全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベース2550mmのコンパクトSUV。
全幅により3ナンバー枠になるものの、狭い住宅街や駐車場などでも取り回しがしやすく、最小回転半径は5.1mに収まっています。コンパクトカーのポロをベースにしたSUVでアウディQ2の兄弟車といえば分かりやすいかもしれません。
搭載されるエンジンは、1.0L直列3気筒ターボの「TSI」で、トランスミッションは乾式の7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)。116PS/5000rpm〜5500rpm、200Nm/2000rpm〜3500rpmというアウトプットは、1270kgという車両重量のT-Crossを軽快に走らせます。なお、エンジンスタータースイッチは、シフトレバーの左奥側にあり、右ハンドル車からはやや死角になっている上に少しオン/オフしにくいのが少々残念。
■7速DSGの進化も実感できる
乗り味は、フォルクスワーゲンらしく硬質な足まわりと、高いボディ剛性感からくるガッチリとしたテイスト。路面によってはコツコツとした振動が伝わってきますが、ボディがしっかりしているため不快ではありません。また、1人乗車にバッグ1つ程度であれば、1.0Lの3気筒ターボでも力不足とは無縁で、山道でも元気に走ってくれます。
年々アップデートが図られている7速DSGは、微低速域でも違和感はほとんどなく、またテンポ良くシフトアップするのもフォルクスワーゲンのDSGらしく、ダイレクト感のある走りが楽しめます。フォルクスワーゲンのファンはもちろん、同ブランドに乗ったことがある方なら「これだよ、これ!」と納得できるはず。
多様なコーナーがあるワインディングロードでは、弱アンダーステアに徹したコーナリングマナーで、操縦安定性の高さも印象的。前後席ともにアップライトな乗車姿勢になるため、Rのきついコーナーではややロールが大きく感じられますが、路面追従性もまずまずで、常識的な速度内であれば不安を覚えることはないでしょう。アダプティブクルーズコントロールを全車に標準装備し、ロングクルーズも余裕でこなしてくれます。
ポロよりも全高がある分、広い室内と荷室が確保されていて、冒頭で紹介したように取り回しもしやすいフォルクスワーゲンT-CROSS。使い勝手については別記事でご紹介しますが、ブームのキャンプにも夫婦2人であれば十分に使えそう。駆動方式はFFのみですが、シティユースにちょうどいいサイズでありながら、独身の方からファミリーまで使える実用性、広さを確保したジャストサイズのSUVとして、日本でもかなり売れ筋になりそうです。
(文/写真 塚田勝弘)