80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第13回は、高級コンパクトとして生まれつつ、高い走行性能でWRCを席巻したイタリアンハッチに太鼓判です。
■高級なスパイスを加えたコンパクトボディ
フィアット傘下として、ベータやガンマといった中・大型車を送り出していたランチアは、70年代後半になり小型車を計画。1979年、フィアット・リトモのコンポーネンツを使いつつ、独自の個性を与えて発表したのが初代のデルタです。
初代ゴルフに比べ、居住性に優れる大きなキャビンとシャープなボディは80年代の入口に相応しい佇まい。この後に発表されるフィアット・ウーノとの違いを見ると、ジウジアーロデザインの変遷を見て取ることができます。
サイドボディでは、明快でシンプルなキャラクターラインと前後バンパー間を結ぶ「折れ目」の組み合わせが、張りのある面とともに、落ち着きと安定感をもたらします。
早くも一体成型タイプを取り入れた前後バンパーには、大型のブラックモールを加えることで非常に強いアクセントに。一方、ボディサイドに素材色のモールを置かなかったのは、ランチアとしての高級感を示す一環と思えます。
一方で、フロントグリルやガラス周りに加え、ドアノブにもメッキパーツを使うことで、こちらはわかりやすい高級感を演出。とくに初期のスクエアなフロントグリルは、シンプルながら華やかさが加わっています。さらに、リアランプを変則5角形とすることで、後ろ姿に動きを与えています。
■モディファイを消化する基本ボディ
インテリアも基本的な思想は初代ゴルフに準じますが、メーター類など表示類を集めたインパネと、操作系を集めたセンターコンソールの組み合わせは、確実にひとクラス上の質感を得たものです。
日本でのデルタと言えば、HFインテグラーレなどの高性能モデルが話題の中心。豊かなブリスターフェンダーを備え、丸目4灯のランプにチェンジしたスタイルは、赤や黄色のボディ色を含め非常に魅力的です。
ただ、あれこれ要素を加えてもスタイルが乱れないのは、もちろんベースのデザインが優れている証です。80年代を目前に、この確固たる5ドアハッチバックボディの基本型を完成させたのは、やはり大いに評価されるべきでしょう。
●主要諸元 ランチア デルタ HFインテグラーレ 日本仕様 (5MT)
全長3900mm×全幅1695mm×全高1380mm
車両重量 1200kg
ホイールベース 2480mm
エンジン 1995cc 直列4気筒DOHCターボ
出力 185ps/5300rpm 31.0kg-m/2500-3500rpm
(すぎもと たかよし)