80〜90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第12回は、成功した先代を安易に引き継がなかった、エアロダイナミックセダン・クーペに太鼓判です。
■ウエッジボディでもエレガントに
1982年に登場するや大ヒット作となった先代は新たにコンパクトな高級車像を確立。しかし、90年代を迎えるに当たり、あえてスタイリングのコンセプトを大幅に変えて登場したのが3代目の3シリーズです。
水平基調で静的な佇まいが魅力であった先代に対し、80年代からさらに一歩進んだ空力特性を意識したボディは、エアロダイナミクスを進めたウエッジシェイプ・スタイル。
プロポーションも2700mmのロングホイールベースにより劇的に変化し、可能な限り短くしたフロントオーバーハングとハイデッキの組み合わせが勢いのある前進感を強調します。不思議なのは、そうでありながらも同時にエレガントさを感じるところ。
フラッシュサーフェス化を進めたボディは、プレスドアを採用した4ドアセダンでは強い一体感を獲得し、後に追加したクーペの繊細さと性格を分けました。いずれも、ドアハンドルをつなぐ極細のキャラクターラインが適度なアクセントとなり、また、太めのブラックのモールがボディをグッと引き締めています。
伝統のフロント2連丸形ランプは、クリアカバーで被うことでさらに空力性能をアップさせると同時に、圧倒的な先進性を表現。ボディ色で囲ったキドニーグリルとの組み合わせは、スポーティでありながら端正なフロントフェイスを作ります。
■単なる新しさは求めない
先代でも十分にモダンだったインテリアは、情報・操作系をまとめたインパネに精緻さと重厚感を加えました。広い空間を生かしスリムにまとめた助手席側との対比が興味深いところです。
3シリーズと言えば、先代のE30こそが名作というのが一般的なクルマファンの認識です。バブル経済に乗って日本市場に浸透したことも大きかったのかもしれません。しかし、3代目は大幅なエアロ化を果たしただけでなく、エレガントさや端正さを継続しつつ、まったく異なる個性を持った点が出色です。
ここ数年のBMWデザインはどうもパッとしないというのが筆者の感想。そもそもBMWは保守的なブランドだという声も聞きます。けれども、この3代目を見ていると伝統の気品やエレガントさを維持しつつも、新しいスタイリングに挑むことは可能だと思わせるのです。
●主要諸元 BMW 3シリーズ(E36)325i (5AT)
全長4435mm×全幅1695mm×全高1395mm
車両重量 1360kg
ホイールベース 2700mm
エンジン 2493cc 直列6気筒DOHC
出力 192ps/5900rpm 25.0kg-m/4700rpm
(すぎもと たかよし)