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■FSWで行われた日本の自動車メーカー向けの技術展示・試乗会「Vision Zero Days Japan」
ドイツの自動車用システムサプライヤーであるZFジャパンが、日本の自動車メーカー向けの技術展示・試乗会「Vision Zero Days Japan」を開催しました。
およそ1週間にわたって富士スピードウェイと周辺道路を使用して行われたこのイベントでは、同社が特に力を入れている自動運転や統合安全、車両の動作制御といった分野における最新の技術と製品に触れることができました。その中でも印象的だったのが、同社の電動化に対するアプローチでした。
今年の5月にclicccarでもお知らせしましたが、横浜市にあるZFの「ジャパンテックセンター(JTC)」が電動トラックを開発しました。短時間ではありましたが、富士スピードウェイのショートサーキットでこの総重量5トンのトラックに試乗することができました。エンジンとトランスミッションが取り付けられていたスペースに、電動セントラルドライブモジュール「CeTrax lite」を搭載して完全電動化したこのトラックは、これまでのイメージを大きく変える新鮮な経験をさせてくれました。
・まるでスポーツカー並みの電動トラック「CeTrax lite」
まず、そのスポーティとも言える動力性能。ZFジャパンによると、「CeTrax lite」は最高出力150kW、最大トルク380Nmを発生し、「このクラスの内燃機関ユニットと同等の走行性能を確保」しているそうです。実際に運転してみると、ディーゼルエンジン搭載車をはるかに上回る加速感が味わえます。特に発進や加速時においては、モーターの特性によってアクセルを踏んだ瞬間からほぼ最大トルクが得られるため、「蹴り上げ」感は高出力エンジンを搭載したスポーツカーと同等のフィーリングでした。
コーナー出口での加速では簡単にホイールスピンを起こすじゃじゃ馬ぶりでしたが、エンジニアによれば、「試乗用に、あえて極端なセッティングにしてある」とのことでした。局所的ゼロエミッションなのはもちろんですが、自動車メーカーの要望に応じて出力特性に関するきめ細やかなプログラミングが可能なのも、電気自動車(EV)のメリットでしょう。
もう一つ印象的だったのが、高級感のある乗り心地でした。パワートレインを電動モジュールに変更しただけなので、運転席に座った印象は当然ながら普通のトラックです。ただ、イグニッションスイッチをオン、つまりエンジンをかけても無音。通常は運転席の真下で回るディーゼルエンジンから伝わってくる振動もゼロ。アクセルペダルを踏んでも、EV特有の「キーン」というインバーターの音がわずかに耳に届く以外は静かに、そしてスムーズに加速していきます。振動の無いスムーズさは、プレミアムブランドの上級セダンを連想させる快適さでした。
このトラック、EVですから排気ガスを出さないという環境面でのメリットはもちろんありますが、太いトルクによる乗りやすさと騒音・振動の無い乗り心地の良さで、ドライバーの疲労軽減にも大きく貢献するでしょう。インターネット通販の増加などで道路交通量が増し、渋滞や疲労による痛ましい事故が後を絶たない昨今。電動化は、少なくとも商用車分野においては安全性の向上にも役立つのではないかと感じました。
この電動トラックはあくまでプロトタイプであり、将来に向けた提案という位置づけですが、ZFの電動パワートレインは既に多くの量産車に採用されています。
先ごろ発売されたEV、「メルセデスベンツEQC」には、モーター、減速機、インバーターを統合した出力150kWの電動ドライブが前後合わせて2基搭載されています。
・EV走行距離100kmを実現したプラグインハイブリッド「EVplus」
現状では、充電インフラの問題などでEVの購入をためらう消費者が多いのも事実です。ZFは現実的なソリューションとして、ハイブリッドユニットの供給も行っています。同社のベストセラーである8速オートマチックトランスミッション(製品名「8HP」)のプラグインハイブリッドバージョンは、「BMW 7シリーズ」に採用され、ピークパワー90kWのモーターでおよそ50km(同車のカタログデータ)の電気走行を可能にします。
また、9月に行われたフランクフルトモーターショーでZFが発表した「EVplus」コンセプトカー(プラグインハイブリッド)は、1回の充電で100kmの電動走行ができるシステムを搭載しています。
「8HP」にはコンベンショナルなエンジンと組み合わせるバージョンはもちろんですが、マイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドなど、自動車メーカーのニーズに応じた仕様をフレキシブルに供給できる強みがあります。さらに、そうした異なる仕様のユニット間で可能な限りパーツの共通化を図ることで生産効率を向上させ、低コスト化も実現しています。
このようにZFは、市場や各自動車メーカー固有のニーズに合わせた電動化を進めています。また、同社の最先端リューションは乗用車や商用車だけでなく産業機器にも採用されています。統合ソリューションプロバイダーとしてZFは、安全、快適で環境に優しい次世代のモビリティ(「Next Generation Mobility」)の実現をサポートしていきます。 Vision Zero Days Japanイベントで感じたのは、もっともっと安全で快適、そしてクリーンなクルマが乗用車や商用車問わず、今よりも手ごろな価格で手に入れられる時代がもうそこまで来ているというモビリティの明るい未来でした。
(Toru Ishikawa)
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