キーワードは「柴犬」? 新型フィットのデザインは家族のような親しみと自然な造形がテーマ【東京モーターショー2019】

10月24日から始まった東京モーターショー2019。各メーカーが出品するコンセプトカーや市販予定車から、注目車について担当デザイナーに速攻インタビューを敢行。第4回目は「自分をもっともっと連れ出すんだ」をテーマとしたホンダ・ブースから、年明けに発売予定の新型フィットに注目です。

■柴犬のように身近で親しみのある存在に

── ます最初に、4代目となる新型は現行モデルとかなり趣が異なりますが、どのようなコンセプトを立てたのでしょうか?

「フィットはホンダを代表するコンパクトカーですから、多くのユーザーが心地のよさを感じるモチーフとして「柴犬」をイメージしました。可愛さや心地のよさはもちろん、時にはオーナーを守ってくれる存在でもあり、やがて家族の一員になる。そうした身近な存在として、これ見よがしのデザインには絶対にしたくなかったんです」

── フロントはランプもグリルも柔らかではありますが、同時に立体的な表現になりましたね

「コンパクトカーであっても安心感は欠かせませんから、しっかりしたカタマリ感を持たせたかったのです。ランプ形状はあまりシャープにせず、奥行きを持たせて機械の冷たさが感じられないものとしています。グリルもカタマリの一部を構成するような立体表現ですね。一方で、バンパー下部は従来のプロダクト的な表現でスッキリとさせました」

フィット・サイド
フードから一旦ラインを下げることでフロントのカタマリ感を出す

── サイドウインドウ下端はフードのラインをそのまま後ろに流すのではなく、三角窓の部分で一旦下げているのが特徴的です

「ここは室内の造形に合わせていることもありますが、単にフードからそのまま伸ばしてしまうとフロントのカタマリ感が弱くなってしまうんです。ここで一度しっかり踏ん張ってからラインを流すと、カタマリとしての力強さが表現できるわけです」

── サイドグラフィックの後端は丸い軌跡で下に向けていますが、そのまま後ろまで伸ばさなかったのはなぜですか?

「リアピラー部分はいろいろと試行したのですが、フィットはもともとキャビンが非常に大きいので、それを必要以上に強調してしまうと移動体として若干不安を感じさせてしまいます。そこで、後方視界を確保しながら、いかにボディと融合させバランスさせるかを検討しました」

フィット・リアピラー
サイドウインドウは適度なところで収束させ、ピラーの太さを確保

■必然性がないことはやらない!

── リアランプですが、歴代は三角形や縦型でしたが、今回は横長でずいぶん表情が変わりました

「新型は現行モデルに比べ、ベルトラインやボディのピークがかなり下がっています。これはもちろん重心を下げることが目的ですが、その中でリアランプも横長タイプのU字形にしました。最近は目立たせることを目的にパーツをあえて上に集める傾向がありますが、移動するモノとしては不安を感じさせてしまいますので…」

フィット・リア
リアランプは重心を下げたことで初めて横型に

── キャラクターラインは前後を強く貫くのではなく、比較的緩やかな表情としましたね

「先のカタマリ感と同じ話ですが、このラインはボディのピークに合わせて引いているだけなんです。つまり、線だけで何かを表現しようということではなくて、自然に見えること、必然性があることだけしかやらないということです」

── シンプルを目指したというより、結果的にシンプルな造形になったということですね。本日はありがとうございました。

(語る人)
株式会社本田技術研究所オートモービルセンター
デザイン室 テクニカルデザインスタジオ
研究員 デザイナー 白 鍾 國 氏

フィット・デザイナー

(インタビュー・すぎもと たかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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