●ドアハンドルに手をかける時代の終焉、これからはタッチ&自動開閉で、スマートなアクセスを
東京モーターショー2019に出展をしている「キーケルト」は、ドイツの会社で、クルマのロックシステムを中心に研究開発・製造を行っているメーカーです。ドイツ本国からアメリカ、そして近年ではアジア圏、特に中国での活躍が目覚ましく、世界各国の自動車メーカーのロックシステムを手掛ける最大手です。
キーケルトのドアラッチやロックシステムを採用するメーカーは、フォルクスワーゲンをはじめ、ルノー、フェラーリ、ボルボ、マツダや日産など多岐にわたります。
キーケルトの「excellENTRY」は、ドア操作時に必要な操作力の低減やタッチセンサーにより、ドアを自動開閉するシステムです。このシステムにより、従来ドアの開閉のために必要だったドアハンドルが不要となり、クルマのデザインはより自由に独創的に変わっていくでしょう。
自動開閉ドアシステムの「actiMOVE」は、従来までのスライドドアのオート機能はもちろん、ヒンジドアでもスムーズかつ静かなドアの開閉を可能にしています。完全に自動化されたドア開閉により、傾斜地に駐車した際などのドアのスイングバックを発生させず、ドアオープンの位置を柔軟に固定できることにより、「重さを感じない」ドア操作が可能になっているのです。
年齢、体力などを問わず、様々なクルマのドアの開閉が自在に可能になるとともに、隣接するクルマや障害物への衝突を避けられるこのシステムは、日常使用から、介護、医療の現場などで働くクルマなど、数多くのシチュエーションでの活躍が考えられます。
また、このような機能の多くは電動化技術ですが、「excellENTRY」は電力喪失の場合でも、操作を可能にするための十分な電気的バックアップを備えていて、バッテリーあがりや事故、災害時でも高い安全性が保証されています。小さなヒンジ部品や、ドアロックラッチに、バックアップ電源を確保し、いつでもどこでも、どんな時でも便利に動くドアの自動化技術は、コンセプトカーや未来のクルマだけの非日常的なシステムでは無く、もうすぐ目の前まで来ている技術なのです。
●自動ドア化と小型ラッチの開く未来のカタチ
展示されているパーツを見ていると、ドアロックに必要な部品の「ラッチ」が非常に小型化されており、電気制御ユニットやセンサー類が組み込まれているとは思えない大きさになっていました。各種部品の小型化は、クルマ全体の軽量化、環境性能の向上につながり、限られた空間に部品を配置し、新たな機能を組み込む必要のあるクルマの製造過程で、非常に有用なものであることがわかります。
これからの自動運転化技術が進められていくなかで、クルマのアクセスモジュールは簡素化、自動化、一元化がすすめられ、今まで当たり前だった部品やパーツの多くは無くなっていくでしょう。従来までのロックシステムと比較し、部品点数が少なく、コンパクトで軽量なexcellENTRYは、自動運転化から車内空間の向上まで、様々な分野での技術革新をサポートする技術となっています。
クルマを取り巻く自動化技術の中で、ロック技術を中心に、ドアの自動化を進めているキーケルトは、小さな部品から大きな未来を作り出すリーディングカンパニーです。目立たない小さな部品ですが、そこには先進技術がふんだんに盛り込まれています。
(文:佐々木 亘)