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●コンバーチブルを待っていた、レクサスオーナーと販売現場
東京モーターショー2019のレクサスブースには、市販化間近とも言われるLCコンバーチブルが展示してありました。現行ラインナップの中にコンバーチブルモデルがないレクサスでは、待望の存在です。
自動開閉式ハードトップの技術で世界をリードしてきたレクサスがオープンモデルを廃止してから5年、再スタートを順調に切ることができるのか、考えていきます。
●SC、ISCが築いてきた、レクサスコンバーチブルモデルの系譜
2代目SC430がレクサス初のコンバーチブルモデルとして産声を上げたのが2001年です。世界で初めて自動開閉式ハードトップの開閉時の駆動を電気モーターにより行うことで、静かでスムーズな開閉を可能にし、トラブルの多いハードトップの開閉動作も安定した品質で行うことを可能していました。米国での品質調査でも高い評価を得ており、トップレベルのハードトップオープンカーを作っていたのがレクサスでした。
2009年には、CセグメントセダンISの派生車としてISCが登場します。安定感のあったSCのハードトップ開閉動作をブラッシュアップし、ルーフの自動開閉にかかる時間は20秒と大幅な短縮がされました。エクステリアカラーやインテリアカラーもセダンのISとは差別化が図られ、多色展開とすることコンバーチブルモデルのスペシャリティ感を演出していました。
ISのセダンモデルがフルモデルチェンジした後にも一部改良を繰り返す形で販売は継続されていましたが、2014年5月に販売終了となりました。これによりラグジュアリーブランド「レクサス」から、コンバーチブルモデルが消滅してしまいました。
●RC・LCと期待されたコンバーチブルモデル
ISCの消滅後、レクサスの販売現場ではコンバーチブルモデルの再販を心待ちにしていました。ジャーマン3に代表される、レクサスのライバルメーカーにはコンバーチブルモデルが展開されており、商品ラインアップの中でどうしても太刀打ちできない部分が出てきたのです。
メルセデスベンツのC・E・Sクラスなどのコンバーチブル、BMWのZ4や各シリーズのカブリオレ、アウディのA5カブリオレなど、ライバルメーカーのコンバーチブルモデルに乗ったオーナーの来店はめっきり減ってしまい、さらに自社の抱えるSCオーナー、ISCオーナーの代替えも進めることができなくなってしまいました。
コンバーチブルモデルを所有している客層は、複数台の車両を保有していることが多く、休日の特別な瞬間にコンバーチブルモデルに乗り込み、特別なドライブを楽しむのが多くの目的です。
そのため、コンバーチブルモデルからセダンやクーペへの買い替えは発生することが少なく、「オープンカーでないと意味がない」というオーナーの希望をレクサスは叶えることができませんでした。その間、他社へのオーナーの流出も多く起こっています。
2014年のRCのデビュー、2017年のLCのデビュー時には派生車としてのコンバーチブルモデルが大きく期待されましたが、その後の発表はなく、レクサスのコンバーチブル欠乏症は現在まで5年もの間続いています。
●コンバーチブルの市販化は販売店への花向けに
今回の東京モーターショー2019で、非常に市販化に近い状態でのLCコンバーチブルの展示が行われ、レクサスのオープンカー復活の兆しが、より確度の高いものとして表現されました。
ハードトップの開閉は、レクサスのお家芸でもあるので、スムーズ・高い静粛性・高い品質を維持したままLCコンバーチブルに搭載されていることでしょう。
特別な存在、極めてラグジュアリーでスペシャリティなクルマを販売することは、ラグジュアリーブランドとしての地位の確立と、販売現場への活気も取り戻してくれるはずです。近く、LC・Cが市販化され、レクサスの販売店に大きな華をもたらしてくれることを期待せずにはいられません。
(文:佐々木 亘)