●レクサスの最上級セダンにふさわしい快適性を手に入れたLS
輸入車のように年次改良を施すことで、日本を代表する高級車ブランドとして進化(深化)させていく姿勢を示しているのがレクサスです。開発陣からお話を伺っていてもそうした決意のような強い想いが伝わってきます。
レクサスの最上級サルーンであるLSも例に漏れません。2017年10月に発売された現行型は、クーペ風のスポーティなフォルムに見合うためにかは分かりませんが、少しハードな乗り味を示していました。
しかし、後席にVIPが収まることも多いショーファードリブンとしても使われるLSだけに、後席の快適性は最重要メニューといえる要素。こうした後席の乗員からはもちろん、ドライバーからも乗り心地がイマイチという声が多く聞こえてきたそう。私も思ったよりもハードに振ったテイストのように感じたことがあります。
2018年8月に受けた一部改良(年次改良)で、4WD仕様のショックアブソーバーに伸圧独立オリフィス(ダンパーの伸び/縮みでそれぞれに適したオイル流路(オリフィス)を設定するバルブ機構)を採用することで、減衰力可変幅の拡大や摩擦低減など乗り心地を向上。また、マルチステージハイブリッドシステムのエンジンサウンドや変速制御のチューニング、制振材の追加などにより静粛性も向上させるなど、課題だった乗り心地に加えて、より静かな車内に進化させています。
さらに、2WD(FR)仕様のアブソーバーにも4WD仕様と同様に、伸圧独立オリフィスを採用し、ランフラットタイヤの補強層構造の最適化(縦バネ剛性の低減)、AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)の制御見直し、リヤサスペンションマウントの特性変更と多岐にわたっています。
伸圧独立オリフィスの採用では、減衰力を抑制することで、乗り心地改善につなげています。ランフラットタイヤの縦バネ剛性の低減(サイド部の補強層の最適化)は、19インチが13%、20インチが10%となり、よりランフラットタイヤのデメリットを抑制。
試乗した「LS500h“version L”」では、実際に街中・高速道路で走らせると、現行型が登場した際のコツコツとした入力や細かな振動がほとんど感じられず、路面に対して足が滑らかに動いているように感じられました。
ハイブリッド仕様は、バッテリーアシスト量を増やすことで駆動力をアップしています。これは、アクセル開度40%の時の(蹴り出しトルク/約20km/h)を改良前から170Nmも増強することで、スムーズな加速を引き出すというもので、ビッグデータを使った解析により日常の使用頻度が割り出され、前後加速度(G)と速度域の90%をカバーするトルク特性になっています。
バッテリーアシスト量が増えたことで、アクセル開度40%(0-60km/h)時のエンジン低回転化(約500rpm低回転化)という恩恵も受けていて、静粛性向上に寄与。確かに街中や高速道路を流す分には、エンジン由来の音や振動はほとんど気になりません。
さらに、後席からのリヤシートエンターテインメントの視聴可能エリアを前方に300mm拡大することで、ゆったりとで視聴できるようになっています。後席の見晴らし性も高まっています。リヤシートエンターテインメント視聴時の助手席、ヘッドレストの位置を見直し、開放感を高め、足元もより広くなっています。後席でビジネスをする時だけでなく、くつろぐ際の快適性も向上させることで、ショーファーとしての実力も磨き上げられています。
レクサスLSの後席は、クーペ風スタイルということもあり、頭上空間は心地よい包まれ感があり、足元は十分なスペースが確保されていましたから、今回の一部改良により大切なゲストを乗せるというニーズにも万全に応えてくれます。
大幅に乗り心地、静粛性を向上させ、そしてバッテリーアシスト量の増加によるスムーズな加速により、レクサスの最上級セダンにふさわしい快適性を手に入れたLS。
後席にも座る機会がありましたが、これならドイツ製高級セダンが強みを発揮している同クラスでもLSを手に入れる価値は十分にあると実感しました。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)