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クルマが唯一地面と接しているパーツ、それがタイヤです。タイヤひとつで、走行音が静かになったり、雨の日の運転が楽になったり、燃費がよくなったりします。今回は、車検に通る改造・通らないタイヤチューニングの見分け方を、元自動車ディーラー営業マンが、解説していきます。
■タイヤ本体の変化に注意
純正タイヤ、純正サイズで使用しているから、車検に通らないなんてことは無いでしょう…と思っている方もいると思いますが、車検の際にはタイヤの状態について厳しくチェックされます。
タイヤの劣化は、安定した走行とブレーキ性能に大きく影響します。ヒビ割れや片減りがひどいと、車検に取らなくなる可能性がありますし、タイヤの溝は最も少ないところで1.6mm以上なくてはなりません。タイヤ自体にも「スリップサイン」という残り1.6mmを示すサインがあるので、スリップサインが見える前に交換しておくことが必要です。
●はみ出しOKとなったわけではない
2017年6月に、タイヤに関する保安基準が改正されました。元々はフェンダー部分からのタイヤはみだしに関しては、1mmでも飛び出してしまってはダメ!という非常に厳格なルールでした。走行中に回転するタイヤやホイールがフェンダーの外に出ていると、回転への巻き込みやタイヤが跳ね上げたものの飛来によって、歩行者及び他のクルマが危険にさらされるため、回転部分はすべてボディフェンダーにて覆われていないとならない基準だったのです。
この基準が、『専ら乗用の用に供する自動車であって、車軸中心をとおる鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30度、及び後方50度に交わる2平面によりはさまれる範囲の最外側がタイヤとなる部分については、外側方向への突出量が10mm未満の場合には「外側方向に突出していないもの」とみなす。』という文言に変わりました。
難しく書かれていますが、読み替えると、地面に対して垂直に下した垂線を、タイヤの円の中心に合わせて、その垂線とフェンダートップの当たる部分から前方に30度、後方に50度の角度の範囲で測定を行い、その角度の範囲内ではタイヤがフェンダーから飛び出す量は10mm以内にしてください…ということです。
実際、10mmのはみ出しが認められたわけですが、これはあくまでも「タイヤ」に限定された話で、タイヤ以外の部分、例えばホイールや取り付けナットなど、タイヤのゴム部分以外のはみ出しは認められていません。実際にこの運用で、はみ出す可能性があるのは、オフロードタイヤの凹凸のある商品ラベルの部分や、扁平タイヤに備わっているリムガード程度で、いたずらにタイヤ・ホイールを大きくできるようになったわけではないので、注意が必要です。
●タイヤの大きさを変えると速度表示が狂う
車検には、スピードメーターが正確に動いているかを計る検査があります。この検査は、クルマを実際に走行させ、クルマのメーターが時速40km/hを示した時に実際にどのくらいの速度が出ているのかを計るものです。ピッタリ40km/hでないとならないわけではなく、時速31km/hから時速42km/hの間に入っていれば問題ありません。
ただし、タイヤの大きさを変えると、同じ速度を出していてもスピードメーターに表示される速度は変わってしまいます。スピードメーターは、スピードセンサーと呼ばれるタイヤの回転を感知して、速度を計算する装置で動いています。タイヤの大きさを変えると、タイヤが1回転する距離(タイヤ外周)が変わるため、タイヤの直径が現在よりも小さくなるとスピードメーターの表示速度に対して実際の走行速度は小さくなり、タイヤの直径が大きくなるとスピードメーターの速度表示速度に対して実際の走行速度は大きくなります。
よほど大きさを変えないと、大きなずれにはつながりませんが、タイヤ・ホイールを交換する場合には、純正サイズに近しいタイヤ直径のものを選ぶと安心です。
●まとめ
自動車ディーラー勤務時代に、保安基準不適合になるクルマの多くはタイヤが問題でした。見落としがちなタイヤのルールをしっかり把握し、安全安心なチューニングをしていきましょう。
(文:佐々木 亘)