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2003年に国内販売を開始したレクサスは、黒を基調としたデザインの店舗を全国各地に展開し、ブランドの認知を広めてきました。ブランドイメージが浸透した中、2018年から全国のレクサス店が次々に改装工事を始めています。今回は新たなコンセプトで生まれ変わった、レクサスの新たなショールームを、元自動車ディーラー営業マンが、ご紹介します。
■モノトーンから和モダンへ
レクサスのショールームには全国統一の規定があり、外装の色や形はもちろん、床の色や床材、壁面やテーブルなどの家具、小物類に至るまで、ほぼすべての物品がマニュアル化され、全国どこのお店でも同一の雰囲気で同一のサービスを受けられるようになっていました。特にモノトーンでまとめられた店内は、一見すると少し怖い感じも受けますが、締まりのあってクールなデザインとなっていました。
高級中古車販売店や、国内の他メーカーが似たようなショールームの出店をされるようになり、レクサス独自の雰囲気づくりが難しくなったことと、開業から10年以上が経過し、全国の建物の老朽化も進んできたことから、新たなコンセプトでの改装となったのです。
改装の口火を切ったのがレクサス新潟で、プレビュー店舗となり、新たなレクサスのショールームコンセプトである和モダンを全国の販売店に提示します。その後、店舗改装案は3案用意され、店舗の立地や雰囲気によって選ぶことができるようになっています。同一都道府県内では、同じコンセプトで統一しているところが多いので、普段見ているショールームと違うものを見てみたい時には、隣県のお店に行ってみると、違った雰囲気を楽しむことができます。
●木を多く配置した優しい印象に
新しいレクサスのショールームで目立つのは木材の存在です。これまで机や小物の展示スペースのラックには、ガラス製品が多く使われていたのに対し、今回の改装で受付から商談スペース、オーナーズラウンジに至るまで、木材が非常に多く使われており、白黒の強い印象だったレクサスが、木で包まれています。明るい茶色から深く濃い茶色を上手く配置し、今までの冷たい印象だった店内が、柔らかく明るく感じられます。
特にオーナーズラウンジは、白色のソファとガラステーブルという老舗ホテルの待合ラウンジのような雰囲気を全面的に改め、ホテルのバーラウンジのようなオシャレな空間に変わっています。ソファ一辺倒だった座席も、バーカウンターのような高めのイスにテーブルの配置と、落ち着いたソファのどちらも選べるようになっており、よりユーティリティな機能を求めるオーナーのために、カウンター席にはUSBとコンセントの給電装置を配置しており、様々な使用環境に対応できるようになっています。
商談スペースからは間仕切りを無くし、客側のイスの背もたれを高く作ることで、個別空間を保持しながら、開放感のある商談テーブルを作り上げています。
また、ショールーム奥手に配置された超大型ビジョンでは、商談中のクルマのカラーイメージやエアロパーツを付けた際のイメージを細かく再現した3D画像を投影することができ、マイカーのイメージづくりに一役買っています。この大型ビジョンはカタログのような役割をするほかに、車種ごとのドアの開閉音までも収録し、スピーカーから再現できる手の入れようです。
●隠れスピンドルを探せ!
今やレクサスのトレードマークでもあるスピンドルグリルは、ショールーム内にもいたるところに配置されています。天井、壁、床にはもちろん、机の脚や壁に備え付けられたラックの間仕切りなど、探し出すと枚挙にいとまがありません。よくここまでデザインしたなと感心してしまいます。ディズニーランドの隠れミッキーのように、誰にも気づかれず、ひっそりと眠る隠れスピンドルを探してみるのもいいかもしれません。
●まとめ
大きくコンセプトを変えたレクサスショールームは、日本の新たな高級車ディーラーの形を模索したものなのかもしれません。他業界の高級店には少ない、ウィットで遊び心に富んだショールームは、新たなショールームの形として受け入れられるのか、注目です。
(文:佐々木 亘)