往年の名車を現代のイメージリーダーに仕立て直したスーパーハッチ「ボルボ・480」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

●名車P1800シリーズの後継として、新たなイメージリーダーとしての役割を担った480

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第7回は、自社のヘリテッジを最大限に活用しつつ、最先端のスタイルに変身させた近未来的スポーティ・ハッチに太鼓判です。

ボルボ480フロント
徹底したフラッシュサーフェスで滑らかなボディを獲得。バンパー下のグリルも必見

往年の名車P1800シリーズのトリを飾った1800ESが生産を終え、市場からも姿を消した70年代後半。ボルボはその後継となるスポーティなハッチバックを計画。最新のFF方式を採用して、1986年に発表されたのが480です。

スポーティな中にもエレガントな気品を前面に出していた1800ESに対し、スラントしたフロントと極めて低いボンネットを持つハッチバックボディは、全高も1330mm(ターボ)に止まる思い切った低重心プロポーション。

さらに、80年代らしく徹底されたフラッシュサーフェスでボディの滑らかさが際立ちますが、豊かなホイールアーチを始め、張りを持たせた面によって安っぽさはありません。

ボンネットに溶け込んで存在感を消したリトラクタブルライトの下には、コーナーランプ類を並べてアクセントとし、さらにボルボ独自のグリルをバンパー下に設けるという裏技?で独自の表情をつくります。

ボルボ480リア
左右に拡幅されたリアランプは1800ESのオマージュ。ブラックのパネルが高い質感を表現

一方、左右のフェンダーまで広げたリアランプは1800ESをモチーフとしたもの。L型の横長ランプは、低いボディをさらに低く見せる効果を持ちます。また、大型のリアガラスと一体となったブラックのリアパネル全体が先進的なイメージを生み出します。

インテリアでは、操作部を集中させた大型のパネルと、2段構成のグローブボックス部の組み合わせが極めて高い質感を表現。剛健な操作部は多少ビジーではあるものの、このクルマが単にスリムなハッチバックではなく、あくまでボルボであることを示します。

ボルボ480インテリア
立体的なインパネだけでなく、厚みのあるシートの質感も高い

スタイリングは、同社の支社ともいえるオランダのボルボB.V.によるもの。少人数チームによる効率的な仕事は順調で、外部の有名カロッツェリア案を押し退けてコンペを勝ち抜いたといいます。

自社の「名車」を復活させる場合、かつてのイメージを大きく残すか否かのふた通りがあります。480はもちろん後者ですが、その思い切り具合が突き抜けていて、販売面の成功だけでなく新たなイメージリーダーとして成立した点が素晴らしいといえそうです。

●主要諸元 ボルボ 480ターボ (5MT)
全長4300mm×全幅1685mm×全高1330mm
車両重量 1050kg
ホイールベース 2500mm
エンジン 1721cc 直列4気筒SOHCターボ
出力 120ps/5400rpm 17.8kg-m/3600rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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