新型GRスープラをTRDがチューニング。「TRAS」が生み出す新感覚の乗り心地【TRDスープラ試乗】

●逆転の発想で生まれたショックアブソーバー「TRAS」を装着したTRDスープラ

トヨタ系ワークスのTRDがチューニングしたスープラには、各種のエアロパーツなどに加えてテスト中のショックアブソーバー「TRAS」が装着されていました。この「TRAS」こそが、今回のTRDスープラのもっとも大きなトピックスと言えます。

TRDスープラ前7/3
エアロパーツが装着され、スポーティな雰囲気となっているTRDスープラ

普通、ショックアブソーバーは中立の位置は伸びきった状態で、それを縮めて装着します。つまり、つねに伸びようとしている状態です。スプリングも通常は縮めて装着するか、装着後に車重で縮められますので、どちらも伸びようしている状態でクルマに装着されていることになります。

TRAS製品
リヤ用は別体タンクが付くTRAS
TRAS 説明用
左がTRAS、右が通常モデルのショックアブソーバー。TRASは縮んだ状態が基本

ここで逆転の発想です。TRASは縮まろうとするショックアブソーバーなのです。TRASがもっとも効力を発揮すると言われているのが、コーナリング時の内輪です。

コーナリング時に内輪は浮き上がろうとします。つまりインリフトです。従来のショックアブソーバーは伸び方向に力が掛かるのでインリフトを助長しますが、TRASは縮まろうとするので、インリフトを抑制するというわけです。そしてアウト側ではより押しつけようとするので、コーナリングの安定感が期待できます。

TRDスープラ 正面
正面からのスタイリング
TRDスープラ 真横
真横のスタイリング
TRDスープラ 真後ろ
真後ろからのスタイリング

走らせてみると、低速から動きが異なります。まず、フラット感が今までの感覚と違うのです。試乗車にはボディの余分な動きを抑制するパフォーマンスダンパーも装着されているので、全体としてまとまり感のある走りです。

そうしたことも相まって、ピシッとしたフラット感が得られています。フラット感を出すと乗り心地が硬めになることが多いのですが、そうしたこともなくしなやかでありながら、ピシッとまとまった乗り味を実現しています。

TRDスープラ パフォーマンスダンパー
フンロトのパフォーマンスダンパーは、エンジン前方に装着される

コーナリングに関しても安定感の高いものです。コーナー入り口に向かってステアリングを切っていくとフラット感を保ったままノーズがインを向いていきます。ロール感が少ない乗り味はチューニングカーらしいものですが、やたらと硬いという印象は皆無です。

コーナーに入っていくとロールがよく抑えられたままで、コーナリングを終えて脱出していきます。まだ試作段階ということで、大きなうねりやギャップなどは苦手分野という感じですが、ここの部分を克服できれば、最新の乗り味実現となることでしょう。

TRDスープラ タイヤホイール
19インチのアルミ鍛造ホイールにミシュランのパイロットスポーツ4Sが組み合わされる

エクステリアまわりで装備されたのは、フロントスポイラー、サイドスカート、リヤサイドスポイラー、サイドドアガーニッシュ、トランクスポイラー、カーボンナンバーフレーム、19インチ鍛造アルミホイール。全体として引き締まったスタイリングに仕上げられていました。

TRDスープラ リヤ7/3スタイリング
リヤ7/3スタイリング
TRDスープラ 走り
フラット感のある走りを実現しているTRASが装着されたTRDスープラ

(文・諸星陽一/写真・長野達郎)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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