アイサイト他「衝突被害軽減ブレーキ」などの安全装備対象の「ASV割引」で自動車保険は安くなる!【保険/車検のミニ知識】

時代の変遷と技術革新により、自動車事故での死傷者の数や、事故そのものの件数を減らそうとする動きが加速しています。この流れを最も敏感に取り入れるのが自動車保険の割引制度です。今回は、自動車保険が割引になる安全装備を、元自動車ディーラー営業マンが、解説していきます。

■近年廃止された割引制度

安全装備に対する割引制度で有名だったのは「エアバッグ割引」「ABS割引」「イモビライザー割引」の3つです。平成の初めごろから採用が始まり、事故の被害軽減や、自動車盗難件数の減少に寄与する装備として注目されました。

2019年現在までに、それぞれの装備は新車装着率100%に限りなく近くなり、特別な安全装備ではなくなります。このような状態になると、保険会社は「多くの人が割引を受けられる状態となった」という理由で、エアバッグ、ABS、イモビライザーの装着に対する割引を廃止しました。

●現在使えるASV割引とは

2018年1月から多くの保険会社で採用しているのがASV割引です。ASVとは「Advanced Safety Vehicle」の略で、先進安全自動車と訳されます。このASV割引で対象となっているのが、「衝突被害軽減ブレーキ」(AEB)です。各メーカーで名称が異なるので、ここで整理しておきましょう。

ASVとは、衝突被害軽減ブレーキの他にも、車線維持支援装置や、定速走行車間距離制御装置なども含まれた総称です。自動車メーカーでは多くの場合、パッケージング化されており、スバルのアイサイトや、トヨタセーフティセンス、ホンダセンシング、ダイハツのスマートアシストなどがすべてASVに含まれます。

これらのパッケージングされた装備であればAEBも含まれており、割引対象となりますが、個別に先進安全自動車の装備を選択して、車線逸脱警報やオートクルーズなどが付いていても、衝突被害軽減ブレーキが付いていなければ、ASV割引の対象とはなりません。

スバルのアイサイト
安全装備で保険料は安くなります。

また、ASV割引には適用できる期間があり、新型車として販売を開始されてから3年間というのが多くの保険会社の定める期間です。新車として登録してから3年間ではなく、そのクルマが世の中に出回るようになってから3年間となるので、注意が必要です。この期間はクルマの型式が変更されてから3年間という見方をするので、途中にマイナーチェンジや一部改良が入っても、型式変更がかからなければ旧モデルとして扱われます。

今までの新車割引やイモビライザー割引のように、新規登録から3年間というわかりやすい区分ではなく、型式変更で判断するASV割引適用の有無は、ユーザー側がしっかりと調べて対応するしかありません。

●9%の大きな割引率

エアバッグ割引は10%前後、イモビライザー割引は3%程度の割引率でした。エアバッグ割引が廃止されて以降、安全装備に関わる大きな割引が無かった中で、ASV割引は約9%割引と、自動車保険の割引制度の中では、高い割引率を誇ります。

新規開発車両から3年間という短い期間ですが、近々フルモデルチェンジを予定されているクルマであれば、発売と同時に購入することでASV割引を最大限に利用することも可能です。

発売から3年という期間が設けられているのは、実際にASVを使用しているクルマの事故動向を確認するためです。自動車保険は車両料率によって保険料が異なりますが、ASVの作用により、事故が少なくなれば、その分だけ保険会社の負担も少なくなり、車両料率の引き下げにつながっていきます。ASV割引の4年目以降の考え方は、車両料率に割引を移行させたいというものなので、ASVにより事故件数が減り、保険金の請求が少なくなれば、恒久的に保険料が引き下げられていく車種が増えていくかもしれません。

●まとめ

新しい割引制度であるASV割引は、事故の少ない世の中にして、保険会社もドライバーも負担が少なくなるようにと考えられた、未来を構築する制度です。ASV車両の普及とともに、自動車事故をゼロにできるよう、先進技術の搭載されたクルマに乗って、安全、安心、そして経済的にも安く、カーライフを送りましょう。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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