●フリーアナ安東弘樹さんのクルマ愛が炸裂したトークイベント
自動車産業を取り巻く、姿の見えない黒船のような存在が、皆さんご存知の「CASE」。誰が付けたか「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(カーシェアリングとサービス)」「Electric(電気自動車)」の頭文字をつなげたものです。
この次世代技術を制したものが業界の覇権を握るとばかりに、湯水のように開発費が注がれています。2020年3月期の国内メーカー3社の研究開発費は前期比5.8%増の3兆800億円という初の3兆円超え。
乗っからないことが時代遅れであるかの如くの「CASE時代」を、日常のカーライフと冷静に照らし合わせて考えてみよう、といった趣旨の「プレミアムセミナー」が8月21日、東京・品川のTKPガーデンシティにて開かれました。
主催したのはイチネンケミカルズ。カーケミカル「クリンビュー」ブランドでおなじみであり、創業60年を超える自動車にまつわるサービス大手を母体に持つコングロマリットの一社です。
2017年には神スイングでおなじみ稲村亜美さんと元中日投手の山本昌さんを招いての同様のトークイベントが催されましたが、今回のスペシャルゲストはフリーアナウンサーの安東弘樹さんと、モータージャーナリストの菰田 潔さん、そしてフリーアナウンサーの平井理央さんという面々。華のある登壇者に、参加された同社社員・取引先の方々は大いに盛り上がりました。
安東弘樹さんは日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもあり、自他共に認めるクルマ好き。カーシェアリングについて語るシーンでは、自身がドイツ滞在時に使ったシェアリングアプリ「Drive Now」の使い勝手を熱く語っていました。
「Drive Now」とはメルセデスとBMWが共同でリリースした、いわば“公式”のシェアリングアプリです。スマホでキーを施錠・解錠できたり、借りたいクルマの燃料残量・航続距離が事前に把握できるなど、とても便利なアプリです。“乗り捨て”る場所にも自由度があるそうで、かなり普及しているそうです。
ただし安東さんは、そのままのスキームでは日本での展開は難しいだろうと分析します。その理由は、日本では法律上、一般道では路上に駐車することができないから。そんなところまで冷静に見ています。
また、カーシェアリングが普及することによって「クルマが売れなくなるのでは?」という自動車メーカー側が抱える懸念についても「お試しで乗ることができるので、欲しくなるクルマとも出会えるので心配ないでしょう」と、実際に使った経験ならではの見解を示していました。
平井理央さん自身も都内でカーシェアリングを利用したことがあるらしく、そのことを菰田さんと安東さんに告白すると、感心されるとともに「自家用車があるのに、なぜ?」とその謎めいた使用用途についておふたりから突っ込まれていました。
電動化に関しては、菰田さんはかつて2018年に起こった「ボルボ全モデル電動化」についての報道のミスリードを指摘しました。当時、まるですべてのボルボのニューモデルが電気自動車になるかのように報道した機関もあったようですが、これは正しくは「電動モーターを搭載する」ということ。ピュアEVだけでなくHVやPHEVも含まれるということです。
振り返ると、まるですぐにでもガソリン車に乗れなくなるようなセンセーショナルな報道が多かったのも事実です。そんなミスリードに安易に流されないよう、菰田さんは警告していました。
それを踏まえて、2021年のEUのCO2排出量95g/km規制を受けて、今後もEVやPHEVが増えてくると予想します。1g1万円といわれる罰金は、大量に販売する自動車メーカーになるほど切実な問題だからです。
フォーミュラEについても造詣が深い安東さんは「レース展開がエキサイティングになってきました。この先5〜6年で人気も経済規模も、本家のF1に迫るかもしれませんね」とも分析していました。
そんな次世代自動車であるEVとイチネンケミカルズとの接点について菰田さんは「エアコンをONにすると航続距離がぐんと短くなるのがEVです。エアコンを使わないとウインドウが曇ってしまいます。そこでクリンビューの出番です。曇りを抑えればエアコン稼働の時間も短くなるので、エコドライブになります」と話します。菰田さんも若かりし頃から、グローブボックスにはクリンビューを常備していたとか。
続いて菰田さんは、EVの普及について世界の事例を挙げて解説しました。「自国に自動車産業のないノルウェーは、EV先進国と呼ばれています。それは、EVに関して関税を撤廃したから。ガソリン車が100%関税がかかるところ、EVはゼロなんです。そのためEVの普及率は60%になったのですが、深刻な税収減に悩んでいるのです」と、何事にも光と影があることも指摘します。
また、ロングドライブ大好きな安東さんは自称「片道500kmくらいは何とも思わないクルマ変態」だそうです。20歳から52歳の現在まで自動車ローンが途切れたことはなく、愛車遍歴は何と43台。フリーアナウンサーになってからは年収は倍くらいにはなったらしいですが「薄利多売」と謙遜します。具体的な年収は? の質問には「羽鳥さんだと帯番組を持っているので億単位ですが……」と言葉を濁していました。
現在の愛車はクリーンディーゼル搭載のクルマで、9ATのおかげもあって満タンで1000kmは無給油で走るとのこと。国産車、とくにマツダの試乗会に呼ばれた際は、猛烈にATの多段化をアピールしているそうです。
トークショーの結びは、EVやHVなど流行に流されたクルマ選びにならぬよう、長距離ドライブが多いならディーゼルエンジン搭載車を選ぶなど、ライフスタイルに合わせたパワートレーン選びが大事、ということでまとまりました。
(畑澤清志)