【自動車用語辞典:電動化技術「ハイブリッド」】エンジンとモーターを上手に使い分けて燃費向上を実現

■エンジンとモーターの動力合成法によって3つに分けられる

●日本では低燃費車の代表選手

1997年に量産初のハイブリッド車(HEV)プリウスが発売されて以降、さまざまなHEVが発売され、日本では低燃費車として確固たる地位を確立しています。
モーターの役割やシステム構成の違いによって、さまざまなタイプのHEVが存在します。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて、解説していきます。

●なぜHEVは燃費が良いのか

HEVは、エンジンとモーターを搭載し、両者の出力を適正に使い分けて燃費向上を実現するシステムです。また、エンジン車で熱エネルギーとして捨てていた減速時の運動エネルギーを、電力として回収し再利用することで燃費を向上します。

エンジンは、比較的低回転で負荷の高い領域が最も燃費が良い特性を示します。燃費の良い運転領域でエンジンを運転するために、モーターの出力を巧みに使います。
例えば、加速のような負荷の高い運転では、燃費が悪化しないようにエンジンの負荷を抑え、足りない出力をモーターでアシストします。また、エンジンの負荷が低い定常運転では、エンジンを燃費の良い負荷の高い領域で運転して、余剰分は電池の充電に使います。

モーターを作動させる電気エネルギーは、ブレーキの回生エネルギーか、上記の定常走行時のエンジン余剰分の充電でまかないます。

●システム構成による分類

エンジンとモーターの動力合成法によって、3つの方式に分類されます。

1)パラレル方式

エンジンとモーターを駆動力として使い分けますが、エンジンが主役でモーターは補助的な役割。シンプルな構成で比較的低コストなため、マイルドHEVとして使う場合が多いです。

(代表例:ホンダ「IMA」、スズキ「S-エネチャージ」など)

2)シリーズ方式

エンジンは、電池の発電専用として使い、エンジンで充電した電池でモーター走行。エンジンの出力を常時電気エネルギーに変換するため、その分ロスが発生します。

(代表例:日産「e-Power」など)

3)シリーズ・パラレル方式

パラレルとシリーズの良いとこ取りのシステム。エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分け、エンジンとモーターの駆動力を合成して走行。効率は高いが、システムが複雑でコストも高くなります。

(代表例:プリウス「THS」、新型アコード「i-MMD」など)

●モーター出力と電池容量による分類

モーター出力と電池容量の大きさによって、フル(ストロング)HEVとマイルドHEVに分類されます。

1)フルHEV

大きなモーター/発電機と大容量の電池を搭載します。得られる大きな回生エネルギーをモーター駆動に活用できるため、数km程度のEV走行ができ、20%を超える燃費向上が実現できます。

2)マイルドHEV

比較的小さなモーター/発電機と電池の組み合わせのため、大きな回生エネルギーは得られません。したがって、駆動力のアシストが中心でEV走行はほとんどできず、燃費向上はフルHEVの半分程度に限定されます。


燃費(効率)については、シリーズ・パラレル方式が優れていますが、どれが最も優れているかというよりは、クルマの車格やコンセプトによって、3つのシステムが棲み分けられています。

技術的には、成熟の域に入ったHEVですが、より一般的で汎用性ある技術になるように、高いレベルのコスト低減が求められています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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