割安でも失うものなし? ボルボ・V60のハイブリッドなら「ローパワー版」が実はベストな選択だった

●エンジンスペックが低めだけど、それは全く問題ではない

「理屈ではわかっているんだけどね。とはいえ、やっぱりちょっとはダルさを感じるんじゃないかなあ」

やっとデリバリーが始まったボルボ・V60のPHEV(プラグインハイブリッド)モデル「T6 TwinEngine AWD」。試乗にあたって心配したのはやっぱりそこでした。

「T6 TwinEngine AWD」のポイントは、従来からラインナップするPHEVのトップグレード「T8 TwinEngine AWD」よりもエンジン出力が少ないこと。

上位モデル「T8 TwinEngine AWD」に組み合わせるエンジンはターボとスーパーチャージャーでドーピングした排気量2.0Lの 4気筒で、なんと318ps/400Nmと超パワフル。シリーズ最高の出力です。そこへ87psのモーターを組み合わせているのだから、加速が遅いわけない。あまりの俊足ぶりに「エコなんだかよくわからなくなってくる」というのが正直なところだったりするわけです(真実は「アクセルを踏み込みさえしなければ燃費良好」)。

いっぽうで「T6」のエンジンは253ps/350Nm(モーター出力はおなじ87ps)。スーパーチャージャーもターボも備わる機械的にはかなりコストのかかっているエンジンですが、価格が安くなったぶんだけスペックが落とされているというわけですね(ただしボルボによると「ハード面は変わらず制御だけで差をつけている」とのこと)。すなわち動力性能も落ちているから、もしかしたらちょっと力不足なのかな、とか心配するのが人情ってもの。

だけど、実際に運転してみたらその心配は杞憂に終わりました。ぜんぜん遅くなんてない。動力性能は十分以上で、力不足なんてまったくないのですから。

そうなると価格面のメリットが引き立ってくるわけで、上級装備仕様である「インスクリプション」同士を比べると、「T8」が819万円なのに対して、「T6」では749万円と70万円もプライスダウン。エンジン出力が減るだけでそれだけ価格が違うのだから、「T6」のお買い得感は相当高いということになります。

ボルボの人の耳には入らないことを祈りつつ書きますが、正直なところV60のPHEVを買うなら高い「T8 TwinEngine AWDインスクリプション」ではなく価格控えめな「T6 TwinEngine AWDインスクリプション」で十分ですねこれは。

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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