【真説「スズキ初代カタナ」第2回】世界最速と謳われたGSX1100E。しかし弱点はデザインだった…

GSX1100E

■4スト最後発ながら性能では他メーカーに並んだスズキだったが…

GSX750S/GSX1100Sカタナに18年間乗り続け、オーナーズクラブの副会長も努めた人物が、自らの経験と多くの人へのインタビューから「カタナ」というバイクについて考察する。

1978年、スズキは初の大排気量4ストエンジンを搭載したバイク・GS1000を売り出す。と同時に、ヨシムラにマシンを供給。鈴鹿8時間ロードレースにおいて、当時の耐久レース界で「不沈艦隊」と呼ばれるほど無敵を誇っていたホンダワークスチームのRCB軍団を打ち破る快挙を成し遂げ、スズキとヨシムラの名を世界に轟かせた。


(1978年式 GS1000<生産試作車>)


(2004年に個人が製作したヨシムラGS1000レーサーのレプリカ。再現度は高い)

当時チーフエンジニアを務めていた横内悦夫さんは、「やったあ!」と手放しに喜んだという。それも当然であろう。ここまで来るのには相当の苦労があったからだ。

それまでは2ストエンジン専門のメーカーだったスズキ。ところが、1974年にアメリカ環境庁が排気ガス規制法を発動。その内容は、1970年の排気ガス濃度を1とすると、1976年生産分からその濃度を10分の1にしろ、というもの。スズキは困惑した。当時の技術では、2ストエンジンで法律を満たす排ガス対応が出来なかったからだ。そこで、急遽4ストエンジンの開発をスタート。今後、アメリカにバイクの輸出ができるかどうかの瀬戸際での開発だったのだ。

GS400、GS550、GS750の開発に同時に取り組んだものの、初経験のため難業苦行の連続。ようやく1976年末に生産にこぎつけところ、日本市場で高い評価を得た。さらに、そこで開発の手を緩めることなく、1978年には世界市場を視野に入れたビッグバイク・GS1000を発表。冒頭の快挙を成し遂げ、4ストエンジン最後発メーカーであるスズキの優秀性を世界中に知らしめることに成功したのである。

ちなみにヨシムラの鈴鹿8耐での物語は、NHKのドキュメント番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』でも「不屈の町工場・走れ魂のバイク」というタイトルで放映されたことがある(2004年4月13日放送)。GS1000レーサーを再現して撮影するなど力が入った内容だった。DVDも発売されているので、興味のある方はぜひ見ていただきたい。


(2004年12月、筑波サーキットで行われたテイスト・オブ・フリーランス(現テイストオブツクバ)会場にて、プロジェクトXの放送に使われた車両やレーシングスーツ、ヘルメットなどが展示された)

一躍業界のトップに肩を並べたスズキは、次なるフラッグシップモデルを開発する。GS1000では1気筒あたり2バルブだった並列4気筒エンジンを4バルブ化。排気量も高めてGSX1100Eとして発表したのだ。

GSX1100E

採用された4バルブエンジンは燃焼効率を高めるTSCCなどの新機構を多数採用し100馬力をマーク(GS1000は90馬力)。フレームや足回りなども大幅に改良され、当時は世界最速と呼ばれた。

「発表試乗会を終えた国内外のジャーナリストからは非常に高い評価を受け、1980年型モデルとして市場でも好評だった」という横内さん。満足できる内容だった…はずだが、ひとつだけ気になることがあった。

それはデザインだった。「スズキのバイクは性能は良いが、デザインがダサい」。そんなユーザーからの声が横内さんの耳にも届いていた。メカニズム的なことであれば自分でどうにかできる。しかしデザインに関しては専門外だっただけに、非常に歯がゆい思いがあったという。

同じ頃、ヨーロッパでも動きがあった。長年スズキの海外要員として活躍していた谷雅雄さんがヨーロッパ方面の担当になったのである。

その人事がGSX1100Sカタナ誕生へつながることとなる。

初代カタナの開発者
(写真中央が谷雅雄さん。スズキ歴史館に展示してあるGSX1100Sカタナ・ファイナルエディションの前で海外のカタナオーナーと記念撮影)

(横田和彦)

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