【TOYOTA GR Supra試乗/渡辺敏史】新型「GRスープラ」は『らしい直6』か『軽やかな直4』か? SZ~RZの間には想像以上の差異がある

■日本とドイツ…人間味あふれるトヨタとBMWの開発秘話

●少々厄介なことになっている「トヨタ」の「GRスープラ」

なにかと話題のあのクルマ、いよいよ公道でその実力を体験する日がやってきました。ガズーレーシング初の専売車種ということで、正式名称は「トヨタ」の「GRスープラ」と少々厄介なことになっているのですが、読者の皆さんが興味深いのはもっと厄介そうな話でしょう。その最たるところにあるのがBMWとの共同開発です。

ざっくり言えば企画とデザインはトヨタの側で、開発と製造はBMWの側で行われたという新型スープラ。巷からは、トヨタは自分のところでスポーツカーの1台も作れないのかという非難の声も聞こえてきます。

スープラの共同開発は86の時のそれよりもある意味で全然大変だったと仰せるのは、ご存知スープラの開発をまとめた多田哲哉チーフエンジニアです。氏によればことの発端は12年の春、スペインで行われていた86の報道向け試乗会の最中に入った一本の電話でした。曰く、ミュンヘンにBMWの担当者に会いに行って、クルマを共同開発出来る可能性の有無を探ってきなさいとのこと。以前聞いたところでは、その電話の主は初代プリウスの開発責任者で現在のトヨタ会長でもある内山田竹志さんだったそうです。

その令とあらばことは重大です。試乗会の現場を他のスタッフに任せてミュンヘンへとすっ飛んだ多田さんは視察や交流の結果、可能性ありと判断、レポートを本社に送るやそのプロジェクトの責任者を命じられます。

ちなみにBMWとトヨタに関しては、以前から横置き用小排気量ディーゼルエンジンを融通したりという関係がありまして、11年には環境技術を中心とした本格的なアライアンスがスタートしていました。もちろん両者には得手不得手がありまして、トヨタは電動化にまつわる技術、BMWはディーゼルを含めた内燃機にまつわる技術が得意領域です。そしてBMWは、トヨタも含めた他社が一時は諦めていた直6を自社の代名詞としてしぶとく作り続けてもいました。

実は社内では長らくくすぶり続けていたというスープラ復活。しかし当時のトヨタの主力スポーツエンジンはV6の2GR−FSEにスイッチしており、必要なソリューションがトヨタには既にありませんでした。多田さんは当然、この直6に目を付けてのスポーツカーづくりを目論みます。そしてBMWの側も、当時抱えていた悩みといえば本来、最もアスリートキャラでなければならないZ4シリーズの市場評価が想定以上にユルめ寄りだったこと。ここで両社の思惑が、スープラ&Z4に用いるきっちりスポーツ側に寄せたアーキテクチャーの構築というところで一致したのはめでたいことだったかもしれません。

が、この枠が定まるまでの間、多田さんは国際恋愛の難しさをしこたま痛感したそうです。曰く、文化の違いに加えて言葉の違いも大きかったと。日本とドイツ、思えば母国語は共に非英語ですから言葉でのコミュニケーションでは真意が計りかねることもとても多かったそうです。そこで多田さんはドイツからの帰国子女だというトヨタ社員をチームに迎えて、会議では言葉の裏にあるドイツ人的な心理を汲み取ろうと奮闘。示し合わせたわけではないものの、BMWの側も程なく奥さんが日本人だという社員をミーティングに帯同させたり社員有志で日本文化の研究会などを開いたりと、日本人の深層心理を理解しようと努力を重ねたといいます。

BMWの開発プロセスといえば実地に供する試作車の確度を高めるべく、とにかくシミュレーションを重ねる。その徹底ぶりはトヨタに全くないものだったと経営陣も驚かれたそうです。その一方で、これほどアナログなコミュニケーションが両社の間にあったというのはホッとさせられます。いくらコンピューターの処理能力が上がれど、クルマに命を吹き込むのは人の仕事。こればかりは変わることのない真理でしょう。

と、そんな話でずいぶん長くなってしまいましたが、新型スープラの公道試乗です。場所は伊豆の修善寺方面ということもあって、周囲には伊豆スカイラインや西伊豆スカイラインといった好環境のワインディングもあります。が、撮影含めての時間枠内ではそこに辿り着くのもままならず、曲率大きく道幅狭く凹凸も激しめな、極めて日本的な山坂道を巡ることになりました。が、結果的にはそれがよかったとも思います。

■安価な直4「SZ」はトルク型かつ軽やかな面白さ

この環境下で最も真価を発揮したグレードはSZだったと思います。額面的には197psのパワーよりも320Nmのトルクの方が有り難い感じで、3グレード中で最も軽い1410kgのボディを低回転域からきびきび押し出してくれます。踏み切りでもクルマの動きはフラットで、オープンデフの蹴り出しも穏やか。唯一ランフラットタイヤを履くも扁平率や軽さが奏功してか、乗り心地は角が綺麗に丸められており、荒れた路面でもバネ下の追従感はしっかり出ています。

ブレーキは初期の食い付きに若干甘さを感じるもストロークできちんと効かせてくれてコントロール性も高い。これならひとつ上の258psが載ったとしても大崩れはしないだろうと、そういうシャシー側の素性の良さや余力の高さを感じさせてくれます。

■GRスープラ頂点の直6「RZ」、良すぎる回頭性は好みか?

このSZより200万円高いRZが示すのは、アタマの据わりの良さも手伝って340psのハイパワーを使ってのアクセルオンでの回頭性を気軽に引き出すことが出来るということ。但しクローズドコースのドライブで感じたように、滑り出してからの動きはやはりちょっと速くて、この辺りを個性と考えるか過剰演出と考えるかが好みの分かれるところかもしれません。滑り出すまでの踏ん張り方を見ていると察せられるのですが、この特性はサス骨格由来のタイヤ接地面変化によるものではなく、アクティブデフやVSC等の電子制御側のチューニングによるところが大きいのでしょう。個人的には86がそうであったように、いずれはよりゆっくりと自然に張り出していく方向に芸風を整えていくのではないかという気がしています。

■バランスのとれた「SZ-R」、RZとは性格が全く違う!

そしてクローズドコースでは運転操作を最も実直に追求出来る、素直に反映してもらえるグレードだと感じたのが価格的には真ん中のSZ−Rです。この点、公道でも印象は大きく崩れることはありませんでした。258ps/400Nmの力感はスポーツカーとしてみるに充分、それに見合ったタイヤ設定で駆動力を路面にしっかり伝え切るだけでなく、使い方次第ではパワーオーバーにも持ち込める楽しさも持ち合わせています。でもそこに至るまでは相当恣意的な操舵や制動を行う必要もあり、基本的にはドリフト状態に至るまでの推移はRZよりも穏やか。3グレードの中では一番バランス型と称しても過言ではないでしょう。

ノーズの動きはサイズが上がったタイヤのぶんだけ手応えが現れてはいますが、基本的にはSZと同様の軽やかさ。ここもRZとは一線を画するポイントです。

但し、それらをもってSZ−Rがベストグレードだと申す気持ちはさらさらありません。僕らが知る80以前のスープラのフィーリングに最も近いのはRZに他ならない。それはなんといっても質量やサウンド、振動などに現れる直6の存在感です。多少癖が強くてもそれはクローズドコースでのお楽しみのためにあるものと思えば、普段は直6が醸す上質な滑らかさやや気持ちいい吹け上がりに垂涎していればいいじゃないかというのも、新型スープラに対する正しい接し方かと思います。

ロングツーリングに有り難いACC含むADASはじめ、ナビや高級オーディオなど、ほぼ全てのアイテムが標準で装備される。それらの内容を考えれば、スープラの価格設定はむしろ良心的なのかもしれません。普通に納車されるようになるにはえらく時間がかかりそうですが、その間、ゆっくり構えて全グレードを試乗してみるのもありなのではないでしょうか。SZ~RZの間には、性能以上に乗り味において想像以上の差異があることは知っておいて損はないと思います。

【主要諸元】

RZ
全長/全幅/全高(mm):4380/1865/1290
ホイールベース(mm):2470
トレッド F/R(mm):1595/1590
最低地上高(mm):112
車両重量(kg):1520
エンジン:B58 直6 DOHC ツインスクロールターボチャージャー
排気量(cc):2997
最高出力(kW[ps]/rpm):250[340]/5000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):500[51.0]/1600-4500
トランスミッション:8速スポーツAT
WLTCモード燃費/市街地モード/郊外モード/高速道路モード(km/L):12.2/8.3/12.9/14.7
サスペンション F/R:マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ F:ベンチレーテッドディスク・4ポッドアルミモノコックキャリパー
ブレーキ R:ベンチレーテッドディスク・フローティングキャリパー
タイヤ F/R:255/35ZR19/275/35ZR19
価格:6,900,000円

SZ-R
全長/全幅/全高(mm):4380/1865/1295
ホイールベース(mm):2470
トレッド F/R(mm):1595/1590
最低地上高(mm):118
車両重量(kg):1450
エンジン:B48 直4 DOHC ツインスクロールターボチャージャー
排気量(cc):1998
最高出力(kW[ps]/rpm):190[258]/5000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):400[40.8]/1550-4400
トランスミッション:8速スポーツAT
WLTCモード燃費/市街地モード/郊外モード/高速道路モード(km/L):12.7/9.2/13.1/14.7
サスペンション F/R:マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ F/R:ベンチレーテッドディスク・アルミフローティングキャリパー
タイヤ F/R:255/40R18/275/40R18
価格:5,900,000円

SZ
全長/全幅/全高(mm):4380/1865/1295
ホイールベース(mm):2470
トレッド F/R(mm):1610/1615
最低地上高(mm):118
車両重量(kg):1410
エンジン:B48 直4 DOHC ツインスクロールターボチャージャー
排気量(cc):1998
最高出力(kW[ps]/rpm):145[197]/4500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):320[32.6]/1450-4200
トランスミッション:8速スポーツAT
WLTCモード燃費/市街地モード/郊外モード/高速道路モード(km/L):13.1/9.5/13.6/15.1
サスペンション F/R:マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ F/R:ベンチレーテッドディスク・アルミフローティングキャリパー
タイヤ F/R:225/50R17/255/45R17
価格:4,900,000円

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