スズキ新型KATANA(カタナ)のポイント解説「スズキらしさとKATANAらしさをどこまで表現できるか」【コンセプト&デザイン編】

■雑誌社の企画で作られた1台のコンセプトバイクが、スズキに新型KATANA開発を決心させた


令和元年を代表するバイクになることは間違いないと思われるスズキ新型KATANA。その全貌を、広報資料をもとに数回に分けて紹介していきます。まずは、そのコンセプトとデザインに迫ってみましょう。

●開発の経緯


1980年、ドイツで開催されたケルンモーターショーにプロトタイプが出品された「GSX1100S KATANA」は、ターゲットデザインによりデザインされ、他に類を見ない斬新なデザインで世界中のバイクファンの注目を集めました。

翌1981年、欧州より発売が開始され、日本仕様は1982年に「GSX750S」を発売。以降、途中休止期間はあるものの1991年にGSX250S、1992年にGSX400S、1994年にGSX1100Sが発売。約20年にわたり250ccから1100ccまで基本デザインは変えず販売されました。

2017年秋、イタリアで開催されたミラノ国際モーターサイクルショーにおいて雑誌社の企画により、フラスコーリデザインがデザインを担当し、エンジンズ・エンジニアリング社によって制作された「KATANA 3.0 CONCEPT」が参考出品されました。「GSX1100S KATANA」をモチーフにしたモダンなスタイリングは、市場から数多くの反響を呼びました。スズキは、そのデザインに共感し、実現に向けてプロジェクトを始動。

開発方針は、「KATANA 3.0 CONCEPT」のデザインを最優先に実現することとしましたが、スズキの卓越した「ものづくり精神」と「KATANA」の歴史を背景に、「スズキらしさ」と「KATANAらしさ」を表現することを常に考えながら取り組みました。

鋼の塊を何度も火で熱して叩いて鍛え上げ、丹念に強靭な日本刀を作る過程は、数多のテストを繰り返し、細部にわたり注意深く緻密に造り上げてい<「スズキのものづくり」に通じるものがあります。匠の技により鍛え上げられる日本刀のように、スズキの持つクラフトマンシップは、「KATANA」に精魂を込め造りあげました。

●KATANAプロダクトコンセプト


「Forging a New Street Legend」
(新たなるストリートバイクの伝説を鍛造する)
「Forging」とは、刀鍛冶が刀を鍛え上げるという意味を表現しています。新型KATANAは、スズキの持つ技術を結集し、このコンセプトに恥じない、良く鍛え上げられたバイクに仕上げられています。

●KATANAデザインコンセプト


「A Cut Above」
最上級な物、ひとクラス上のもの、という意味が込められています。そのフレーズの中に「刀」をイメージさせる「切る/斬る」の意味を含む「cut」というワードが使用されています。「KATANA」のデザインを象徴するのは、以下の4つの表現です。

1:「KATANA(刀)」
「GSX1100S KATANA」のデザインをモチーフに表現。
2:「The height of excellence(卓越性の高さ)」
独自性の高いデザインを実現するために、スズキの持つ技術力を結集し、妥協せず極めるというコミットメントを表現。
3:「Forged perfection(鍛える)」
強靭かつしなやかな走行フィーリングと共に、アスリートのからだのように無駄のない「鋼(はがね)」のような美しさをデザインで表現。
4:「The decisive cut(切り拓く)」
時代を切り拓く最先端のデザインのモーターサイクルを、「KATANA」で表現。

●LEDヘッドランプ&LEDフロントポジションランプ


「GSX1100S KATANA」の角形デザインをイメージするLEDヘッドランプは、ロ一ビームで上段、ハイビームで上下点灯する2段式。刀の切先をイメージした造形のウイング先端に装備されたLEDポジションランプにより「KATANA」の鋭い顔を表現。

●テールセクション


新設計のLEDリヤコンビネーションランプと、リヤターンシグナルを備えライセンスプレートホルダーが一体となったスズキ初となるターンシグナル付きスイングアームマウントリヤフェンダ一を採用。よりシートテール下をすっきりとさせる外観を実現。ショートテールをより強調し、タフで軽量な印象。

●マフラ一


マフラーは短く、コンパクトなデザインとサイレンサ一本体の色をブラックアウトすることにより、引き締まった外観を強調。

●リヤコンピネーションランプ


新しいLEDリヤコンビネーションランプは、シャープなラインにより、「KATANA」の個性的な外観を演出。

●シート


シートのデザインには「GSX1100S KATANA」のエッセンスであるツートーンカラーと3本ラインの意匠を盛り込み、形状も「KATANA」独自の流れをくむものとしました。また、グリップの良いシート表皮を採用することによりライディング時のマシンホールディング性を向上させ、人車一体感を演出しています。

●フル液晶デイスプレイ多機能インストルメントパネル


軽量コンパクトなフル液晶ディスプレイ多機能インストルメントパネルを採用。フル液晶ディスプレイとすることで、豊富な情報をライダーに提供します。背景が黒のネガテイブ表示を採用し、6段階の輝度調整が可能。

液晶ディスプレイには、スピードメーター、タコメーター、オドメーター、デュアルトリップメーター、ラップタイム、エンジン回転インジケーター、ギヤポジションインジケーター、トラクションコントロールモード表示、サービス リマインダ、燃料計、瞬間燃費計、平均燃費計、航続可能距離計、水温、時計、バッテリー電圧計を表示します。

ターンシグナル、ABS、ニュートラル、エンジン警告、TC、水温/油圧警告、ハイビームの各インジケーターランプはLEDとし、液晶ディスプレイパネルの左右に見やすく配置されています。

イグニッションをONにすると、マルチファンクションディスプレイに、SUZUKIの文字が表示される。その後、画面を刀で切り、「KATANA」のロゴが浮かび上がるという専用のアニメーションは、ユーザーの心をくすぐる演出としています。

エンジン回転インジケーターランプは、インストルメントパネル上部に配置し、見やすさを追求。任意の回転数で点灯するようプログラム可能。バータイプのタコメーターにはピークホールド機能を装備。エンジン回転が下がっても、ピーク回転数の表示を維持します。

【主要諸元】
スズキKATANA
全長×全幅×全高(mm):2,130×835×1,110
軸間距離(mm):1,460
シート高(mm):825
車両重量(kg):215
エンジン形式:水冷4スト直列4気筒DOHC4バルブ
総排気量(cc):998
最高出力(ps/rpm):148/10,000
最大トルク(kgm/rpm):10.9/9,500
燃料タンク容量(L):12
ブレーキ(前・後):ダブルディスク・ディスク
タイヤ(前・後):120/70ZR17・190/50ZR17
価格(円・税込):1,512,000

(文/長野達郎 動画/藤原孝洋)