【自動車用語辞典:駆動方式「センターデフ式4WD」】前後輪の回転差吸収のためにセンターデフを用いる方式

■フルタイム4WDには欠かせないシステム

●機械式、トルセン式、ビスカス式などが存在

通常フルタイム4WDでは、センターデフによって前後輪の回転差を吸収しながら駆動力を前後輪に配分します。

センターデフ式4WDの構造や作動原理について、解説していきます。

●センターデフ式4WDとは

クルマには、左右の駆動輪の内輪差を吸収してスムーズなコーナリングを実現するために、デファレンシャル(差動装置:別頁で詳細に解説)が装備されています。この機構を、前後輪の回転差を吸収するために利用するのが、センターデフです。

4WDで急旋回すると、前後輪の軌跡が異なるため回転速度差によってブレーキがかかったような「タイトコーナーブレーキング」現象が起こります。これを、回避するためにセンターデフ機構が必要なのです。

センターデフの取り付け場所は、FRベースの4WDではトランスファーと後輪用プロペラシャフトの間に組み込まれます。エンジン横置きのFFベースの場合も、後輪用プロペラシャフトの前端に取り付けられますが、トランスファーと一体構成になっているのが一般的です。

●センターデフにもロック機構が

デフ機構では、どこかの車輪のタイヤが空転すると、回転抵抗が少ない方により多く回転を伝えようとし、接地している他の車軸に回転が伝わりにくくなります。それを避けるため、デフの差動に制限を加えるLSD(差動制限装置)や固定するデフロックを装備しています。

センターデフも同様に、ほとんどがLSDやデフロックを装備しています。

●機械式センターデフ方式

遊星歯車(プラネタリー)機構や傘歯車(ベベルギア)機構の組み合わせで、駆動力を前後輪に分配します。駆動力をトランスファーによって前後輪に分配しますが、前後のデフのギア比を変えることによって前後の駆動力配分を設定できます。

スリップしやすい雪路や悪路走行などで用いる場合は、空転を防ぐためにLSDやデフロックを組み合わせる必要があります。

●トルセン・センターデフ方式

ウォームギアを組み合わせたデフギアで構成されています。片側にトルクが集中すると、ピニオンギアにねじり応力が発生して、反対側に駆動力を伝える自己LSD機能を持ちます。

片側のトラクションが消失することで差動機能が制限されます。センターデフとしては差動制限装置にもなるため、デフロックなどは不要になります。

●ビスカスカップリング・センターデフ式

シャフトとともに回転するインナープレートと、ケースとともに回転するアウタープレートが交互に配置され、その中に粘性の高いシリコンオイルが満たされています。
両者に回転差が生じると、オイルのせん断力によって、遅いシャフトは速いシャフト(主軸)によって連れ回されます。さらに回転差が大きくなると、プレート同士が密着して直結の4WDになります。

軽量で制御機構を必要とせず、コストも抑えられるため、デンターデフ方式で最も採用されています。

●多板クラッチ・センターデフ方式

トランスファーで分配した駆動力を、多板クラッチの制御によってもう一方の駆動軸に伝え、駆動力を分配します。

前後輪に差動が生じると、油圧によってクラッチ・プレートとディスク・プレートを密着させて回転を均等にします。状況によっては半クラッチにして前後のトルク配分を調整します。


センターデフ式フルタイム4WDシステムは、本格フルタイム4WDとして雪道に強いオフロード車と位置付けられています。その分コストと車重が増すため、乗用車系には向きません。代表格はトヨタの大型SUVのランクルです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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