未知のドライブ感覚にこれからの可能性を感じる【全日本ラリー参戦マシンでスポーツCVTを体験】

ウェルパインのラリーチームのマシンであるスポーツCVTを搭載するヴィッツに同乗体験試乗と実際にステアリングを握っての試乗が叶いました。

まずは「茂原の女王」の異名を持つ板倉麻美選手ドライブによる茂原ツインサーキットでの試乗です。ピットロードを出てタイトな左コーナーを抜けると下りストレートから右-左へのS字となります。板倉選手の右足はアクセルペダルの上、左足はブレーキペダルの上にあり、微妙なコントロールをしていることが確認できます。果たして、私にこのようなコントロールが可能か? 乗り換えてのスタートとなりました。

エンジンは始動したままの状態でピットでクルマに乗り込みます。セレクトレバーをDに入れ、アクセルを踏み込むと走り出しました。速度を調整するためにアクセルペダルから足を離しても、エンジン回転は極端には落ちません。しかし、速度はしっかりと落ちます。

非常に狭いピットエンドを抜け本コースに入ります。アクセルを踏み込むと、エンジン回転が上昇し6100回転付近になるとあとは速度しか変わりません。アクセルを踏めば速度が上がり、緩めれば速度が下がります。

気がつけば右足はアクセルペダルから離れ、ブレーキペダルを操作。左足はフロアパネルを踏みつけて踏ん張っています。モータースポーツを含めて、今までずっと右ブレーキをやっていた人間にいきなり左足ブレーキはかなり難しいものです。頑張って左足ブレーキを行いながら、コースを走ります。

アクセルを踏みっぱなしてもエンジン回転は6100回転付近を保っています。コーナーに向かってアクセルをオフにしても同じです。エンジン回転は変わらず速度だけが落ちます。その回転数でもっとも駆動力が得られるギヤ比ということは、逆にいえばエンジンブレーキがもっとも効率よく働くギヤ比なので、減速もキッチリと行えます。

なかなか左足ブレーキに馴れることができず、またラップタイムも計測していなかったので、このマシンが速いかどうかの判断は難しいのですが、実際にラリーで実績を残しているだけに速いことは確かなのでしょう。

運転して面白いかどうか? 楽しいか? という点で言えばMTのほうに分があるかもしれません。操るという分野では、使いづらいものを制する楽しさが存在します。

ただ、早さを追求した場合はこのほうが速いという結論があるのでしょう。これは燃費においても同じでしょう。私はCVTを頭ごなしに否定はしない評価をしてきましたが、今回このラリー車にのって、その評価軸が間違っていなかったことを実感することができました。

(文・諸星陽一/写真・高橋 学、ウナ丼)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる