登場直後から大人気。三菱のアジア戦略モデル・エクスパンダーに特別試乗【バンコク・モーターショー2019】

●東南アジアのモータリゼーション過渡期に不可欠な多人数乗りモデルとは?

3月下旬、タイ王国バンコク近郊で開催されたバンコクモーターショーの会場で、三菱自動車のアジア戦略モデルとなるエクスパンダーに試乗しました。

エクスパンダーはミラージュやアトラージュ(日本未導入の小型セダン)と同系統のプラットフォームを使うクロスオーバーMPVです。ボディサイズは全長が4475mm、全幅が1750mm、全高が1695mmです。全高が比較的抑えられているにも関わらず、最低地上高が200mmと高めに設定されているのは、アジア地域をメインマーケットとする仕様らしいところです。

ホイールベースは2775mmです。このホイールベースに対して3列のシート配列は意外なほどゆったり感があります。もちろんサードシートはそれなりのスペースですが、余裕感がはあります。全長もホイールベースもアウトランダーよりも長いのです。ピックアップトラックの荷台に乗ることも当たり前なタイなら、かなり快適な部類となるでしょう。

搭載されるエンジンは105馬力の1.5リットルMIVECです。圧倒的にパワフルというわけではありませんが、クルマのクラスを考えたら、十分なパワー感です。試乗車のミッションはシンプルな4速AT(5速MTもあり)です。エンジンのパワーを追求しない、ミッションをシンプルにするということは、トラブルを減らすことにもつながるのでアジア地区では大切な要素です。

1名乗車での加速感は十分さがあります。タイは日本ほど発進加速を重視しない傾向にある感じしますが、そうしたなかではとくにしっかりした初期加速が得られていて「日本車らしいフィーリング」を実現しています。

長いホイールベースの割にはハンドリングはシャープさがあります。最低地上高が高い分、ロール感はそれなりにありますが、スラロームからでの右フルロールから左フルロールまでの動きもスムーズです。また、ABSを作動させるようなフルブレーキング時もリヤが大きく持ち上がり、挙動を乱れさせるようなこともない安定したものでした。

道路整備や治水が進みつつあるタイ都市部では、ピックアップトラックに代わって乗用タイプの人気が高まってきています。そうしたなかで、多人数乗車ができるクロスオーバーMPVはキーとなるクルマです。エクスパンダーはアジアンマーケットにおいて、非常に重要な役目を果たすモデルであるといえます。

発表直後は引く手あまたで納車が遅れていたエクスパンダーですが、生産体制もよくなり納車待ちもなくなったとのことで、これからはタイ都市部で大量に見かけるようになりそうな予感がします

(文:諸星陽一)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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