【日産・デイズ事前試乗】まさに「究極の軽自動車」現る。登録車レベルの造り込まれた完成度

日産と三菱が共同で作り上げる軽自動車がフルモデルチェンジし2世代目に進化します。正式な発表を前に、日産版となるデイズに試乗する機会を得ました。試乗会場は日産の追浜工場内にあるクローズドコースのグランドライブです。

試乗車として用意されたのは、ターボエンジンモデルと自然吸気モデルの2種で、いずれもSハイブリッド仕様です。自然吸気エンジンにはSハイブリッドを装備しないモデルも存在しています。

今回のデイズはプラットフォーム、パワートレイン、制御系のすべてが刷新されました。ホイールベースは従来に比べて65mmも延長され2495mmとなりました。この増加分はほとんどを後席の居住性に振り分けられました。エンジンルームは縮小されましたが、メンバーを追加するなどして安全性を確保しています。

まず自然吸気エンジン仕様に乗り、コースへ出ます。

走り出した瞬間にただ者ではないことを予感させます。軽自動車特有の薄っぺらさのようなものが一切ないのです。ワゴン系の軽自動車は性能を突き詰める車種と、価格を突き詰める車種に二極化していると言えますが、デイズは明らかに前者だと言えます。軽自動車とコンパクトカーを乗り比べると、軽自動車はどこか詰めが甘いような印象を受けるのですがデイズにはそれがないのです。

以前はノートとデイズはまったく異なるクルマだったのですが、今回のデイズはノートの別バリエーションのような印象です。ミッションはCVTを採用しますが、アクセルを踏み込んでいくと途中でステップ変速のような段差感があります。CVTの利点である変速ショックのなさを否定し、わざとステップ感をつけているわけですが、ユーザーはこのほうが喜ぶというのですからしかたありません。ならば、通常の有段ATでもいいような気もしますが、コストや燃費の面ではCVTとなるのでしょう。

コース上には首都高の継ぎ目を再現した段差があるのですが、この段差を乗り越えてもボディのしっかり感は保たれ、嫌らしいハーシュネスも発生しません。ハンドリングを悪化させるようなワダチ通過も上手にいなします。背の高いモデルなので、コーナーではそれなりにロールを発生させますが、ハンドリングに不安感はありません。

100km/hまで加速しても安定感はそのままで、十分に快適です。風切り音なども上手に消されていていて、軽自動車っぽさはみじんもありません。軽自動車でこのレベルのクルマを作ってしまって果たしていいのか? と思うくらいです。

スラロームも試しましたが安定感はかなりよく、切り返したときの動きも引き締まっています。スラロームではサスペンションが伸びきった状態から縮みきった状態まで(反対側はその逆)動きますが、そうしたなかでの落ち着き感も十分です。

今回の自然吸気エンジンは最高出は52馬力ですが、最大15%のトルクアップとSハイブリッドのアシストにより十分な性能を持っていました。ターボエンジン車は64馬力なのでもちろん力強く走れるのですが、比較的平坦なグランドドライブではその恩恵をあまり感じられませんでした。

一方、自然吸気エンジン車が155/65R14インチタイヤを履くのに対し、ターボ車は165/55R15と太く、扁平なタイヤとなります。このためターボ車のほうが走行時のノイズは若干増え、乗り心地も硬めとなります。ターボも14インチで十分だったのではないかな? というのが正直な印象です。

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる