●オリジナルの美しさを存分に堪能しているオーナーにインタビュー
80〜90年代の日本車のグッドデザイン振り返る本シリーズ。今回は特別編として、2月23日・24日にパシフィコ横浜で開催された日本最大級のクラシックモーターショー「Nostalgic 2days」の会場で出会った、ネオ・クラシック3台のオーナーの声をお届けします。
まず最初は、シャープな白いボディに黒のストライプが似合う、1982年式「トヨタ カローラレビン S」のオーナー、埼玉県在住のUさんです。さっそく入手の経緯から聞いてみましょう。
「免許をとって最初の愛車がTE71トレノで、その後、いろいろと乗り継いだものの、また乗りたいなあと探していたんです。で、一昨年、自分が社会人1年目に住んでいた愛媛県で何とワンオーナー車が見つかったんです。これはもう縁だと思い、埼玉から愛媛まで現車を見に行って即決しました(笑)」
── 新しいクルマにも乗られてきたということですが、なぜいま80年代の旧車に?
「性能や静粛性は劣りますけど、クルマ自身が生きている気がして、運転していてもダイレクトで躍動感がある。スタイルも一見シンプルですが細部を見るとよく作り込んであるし、各パーツには手作り感もあります。最近のクルマはプレス精度などが優れていますが、どうも味がないというか」
── レビンのアピールポイントを教えてください
「フルノーマルのワンオーナー車で、実は塗装もオリジナル。内装ではシート生地だけでなく、フロアカーペットも当時の純正品なんです。前オーナーが痛まないようカバーを付けていたようですね。2T-GエンジンのTE71といえばハードトップやセダンが人気ですけど、このファストバックデザインがお気に入りなんです」
さて、2台目はグレーメタリックのボディが渋い存在感を放っていた1986年式「トヨタ・カムリGT」。オーナーは滋賀県在住のKさんです。
「以前トヨタ店で整備の仕事をしていたのですが、当時からいわゆる羊の皮をかぶった狼的なクルマが好きで、GTの名が付くこのカムリはずっと気になっていました。で、3年前にオークションに出品されてるのを見つけ、滋賀から千葉まで見に行ったんです」
── それまでは新しいクルマに乗っていたんですか?
「いや……新しくはないですね。最初は2代目のカローラⅡ・リトラ GPターボで、次が2代目のカリーナED。いまは奥さんの嫁入り道具だった初代ワゴンRのOEM、マツダ・AZーワゴンを脚にしています(笑)」
── マニアックですね。では、このカムリのアピールポイントを聞かせてください
「先代の2代目もツインカムエンジンを積んでいたのですが、GTの名は付かなかったのと、チョット角ばり過ぎていたかなと。このモデルは丸味がありつついかにもセダン的なスタイルと、ホワイト全盛の時期にこの渋いメタリックカラーがよかった。それとサンルーフ付きはかなり希少ですし、リアスポイラーのさり気なさも気に入ってます」
── Kさんにとって、80年代のクルマの魅力とは何でしょう?
「しっかり開発予算を掛けて作りや様々な装備が充実する一方、まだ自分がエンジンを回してクルマを動かしているという感覚があった。いまのクルマは性能が良くなって乗せられている感じがありながら、かたやコストダウンが見えたりします。そういう意味では、ある種成熟していた時期かもしれないですね」
最後は、1981年式「日産 スカイライン2000ターボGT-EX」のオーナー、都内在住のMさんです。購入の経緯はチョット複雑なようです。
「最初の愛車がR30スカイラインのターボだったのですが、もう一度乗りたいと10年前にRSを購入しました。で、3年ほど前に会社の上司から、亡くなった親戚の形見のクルマを何とかしたいと相談を受けまして、それがこのクルマだったんですね。ワンオーナー車かつターボ仕様ということで、RSを手放して購入しました」
── R30をフルノーマルで乗られているのはかなり珍しいですよね?
「ええ。やっぱりそのクルマ本来の美しさを大切にしたい。カタログの美しい写真や、当時の広告の姿とそっくりそのままの姿を感じたいですよね。もともとR30が好きなのは、あの桜井眞一郎氏が手掛けるなど、伝統やルーツを感じるところでもあったので」
── いまでも80年代のクルマに惹かれるのはなぜですか?
「まずは扱いやすいサイズ感ですね。いまは軽自動車でも妙に大きさを感じさせますが、この頃はコンパクトにまとまっていて視界もいい。それと独立したバンパーやモール類など、各パーツの存在感があって独特の雰囲気を持っているのもいいです」
同じ80年代の旧車でも、車種の好みや楽しみ方は人それぞれです。今回話をお聞きした皆さんは、派手さはなくても、オリジナルの美しさを存分に堪能していました。グッドデザイン太鼓判としては、その点を強く応援したいと思います。
(インタビュー・すぎもと たかよし)