【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判】新しいビッグカーの扉を開いた輸入車キラー。第39回 日産セドリック・グロリア シーマ(初代)

 

●ハイソカーブームのなか「シーマ現象」を起こした初代モデル

80~90年代の日本車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。今回は、日本中がバブルに沸く中、「頂上」という名の優雅なボディと過激な動力性能で、社会現象を起こした高級セダンに太鼓判です。

欧州勢をはじめとした輸入車販売が急増する中、国産車は5ナンバーボディを使った見せかけの拡幅版で対応。その不満に応えるべく、本格的な3ナンバー専用ボディを打ち出したのが、1988年登場のセドリック・グロリア シーマです。

セドリック・グロリアの車台を流用しながらも、1770mmの全幅を得たボディは日本車離れしたワイド&ローのプロポーションに。オーバーハングの長さと、流行のピラーレスハードトップが独自の佇まいを醸し出します。

トランクフードを下げることにより、前から後ろまで段差のないストレートなショルダーラインを獲得。そこへ極めて強い張りのパネルを与えることにより、キャラクターラインを一切使うことなく、サイドボディに高い質感を表現します。

同じく、豊かな面を持ったボンネットフードにつながるフロントフェイスは、サイドに回り込まないランプが、懐かしさと繊細さを兼ね備えた独自の顔を提示。さらに、楕円に揃えたコーナランプとドアミラーが柔らかな表情を作ります。

モールで囲まないリアランプは非常にシンプルですが、表面を凹形とすることでさりげない高級感を演出。サイドモールにも同様の凹面を施し、ボディ全体が威圧感を与えず、優雅な印象を持つに至りました。

インテリアは基本的にセドリック・グロリアと同一。ただ、厚みのあるシート、豊かなドアウエスト部など、ザックリとしたウール素材の使い方を含め、実に温かみのある内装を生み出しました。中間色メインのボディカラーもまた秀逸。

小さなプラットホームにワイドボディを載せるため、ラウンドさせたボディで幅を稼ぐ必要があり、これが結果的に豊かなスタイルを生んだといいます。しかし、外国人デザイナーの関与がウワサされたほどの完成度は、秀作を連発した当時の日産の好調さによるもの。

イギリスやイタリア車の香りがしながらも、確実に日本車に見えるそのスタイルは、翌年登場のインフィニティQ45やセルシオとはまったく異質。もしかしたら、ここに日本の高級車の大きなヒントが隠れていたのかもしれません。

●主要諸元 日産セドリック・グロリア シーマ(4AT)
型式 EーFPAY31
全長4890mm×全幅1770mm×全高1380mm
車両重量 1640kg
ホイールベース 2735mm
エンジン 2960cc V型6気筒DOHCターボ
出力 255ps/6000rpm 35.0kg-m/3200rpm (ネット値)

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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