80~90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、あらたにカローラ スポーツが登場したのを機に、番外編として歴代カローラのデザインを振り返ります。
好景気の波に乗って開発された先代が発売されると、皮肉なことにバブル経済は一気に崩壊。その不況ムードの中、成長路線から一転して身の丈を踏まえて企画されたのが8代目カローラです。
「ベストコンパクトカーの創造」のコンセプトの元、省資源、省エネなど社会との調和を謳うものの、実のところはサイズアップ。が、そのボディもキャビンも実に曖昧な形状で、造形の狙いがほとんど掴めません。
同様に、シェイプアップしたというボディの面質はボンヤリと緊張感がなく、不健康に痩せたかのよう。緩い形状のフロントランプや幅を狭めたグリルもその意図が不明かつ中途半端で、リアも含め個性が感じられません。
上下二分割のバンパーやモールはリサイクルや修理性を追求したというけれど、その前にコスト減を必要以上に感じてしまうもの。ブラックモール自体はヒットした5代目や6代目と同じながら、その表現や質感の差に驚きます。
あっさり、端正と説明されるインテリアは、一体成形の目的が先代までの高品質化とは逆で、いかに安上がりにパーツを作るかに発揮されたかのよう。90年代以降の、安価なクルマの内装作りを先取りした感があります。
「トータルコスト オブ オーナーシップ」など、企画趣旨には苦しい表現が並びますが、しかし実はコスト削減自体は決して悪いことではありません。問題は、その状況をいかに優れたデザインで支えるかの筈です。
8代目の失速は、スタイルにその回答を見出す努力があまり感じらなかったからではないでしょうか。潤沢とは言えない予算の中でも、それを逆手に取った魅力的なデザインは決して少なくはありませんから。
●主要諸元 トヨタカローラ 4ドア SEサルーン 1500 16VALVE EFI(4AT)
型式 E-AE110
全長4285mm×全幅1690mm×全高1385mm
車両重量 1010kg
ホイールベース 2465mm
エンジン 1498cc 直列4気筒DOHC
出力 トルク 100ps/5600rpm 14.0kg-m/4400rpm
(すぎもと たかよし)