これ、事故に遭ったクルマじゃないです……バンコク駐車場のヘビーな人々

東洋のデトロイトと呼ばれ、自動車産業が盛んなことで知られるタイ王国。その首都の北側にモーチットという場所があります。ここはBTSという高架鉄道と地下鉄の両方の駅が存在する場所です。

この写真はモーチットの駐車場で見かけたものです。まるて追突事故のような状況ですが、これは普通に駐められているだけなのです。

よく、フランスをはじめとする欧州圏では路上での縦列駐車が当たり前で、しかもぎりぎりに駐めてしまう。もしも出られないときは前後のクルマを自分のクルマで押して、脱出スペースを作って駐車スペースから出て行くという話を聞きますが、このモーチットではそんなレベルではなくて、駐車するときにすでに押し込むようにして駐車してあります。

この駐車方法が当たり前らしく、少しでも被害を軽減するためか? バンパーの前に発泡スチロールをぶら下げているクルマもあります。

そこで私、ひらめいたのです。これはバンパーを守る格好いい用品を作ればきっと儲かるぞ……と。でも、すでにそういう用品もあるようでした。

タイの年収は都市部と地方で大きく異なるのですが、おおむね日本の3分の1くらいと考えるのがいいと言われています。そうなるとクルマはかなり高価なものとなるのがわかります。

それでも彼らはクルマをかなり道具として使っています。もちろん、高価なクルマを大切に乗っている人や、スーパーカーをビカビカにして乗っている人たちもいます。しかし、多くの人のクルマの使い方はかなり道具感にあふれています。

ではクルマを大切にしていないか? といえば決してそんなことはありません。日本人とはクルマに対する考え方が違うのでしょう。

どっちがいいということはありませんが、日本人ももう少し、クルマとゆるく付き合ってみたら、新しいものが見えてくるかも知れません。

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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