9月16日、オーストリアでレッドブルエアレースの2018シーズン第6戦「ウィーナー・ノイシュタット」が開催された。
オーストリアは2003年にエアレースが初開催された国(開催地はツェルトベク)で、ウィーナー・ノイシュタットでは初開催。
今回のコースは進入とゴール位置が異なるが、前戦カザンに準じたレイアウト。VTM(バーティカルターンマニューバー:垂直上昇ターン)は2度だけだが、ゲートからすぐの所にクラウドライン(飛行禁止エリア:超えると失格)があり、上昇する方向が制限される。エアレース会場にしては珍しい空港で、今年初の陸上に設置された。離陸からそのまま最初のゲートをくぐる、機体の加速性能が問われるトラックだ。
予選結果
1位 室屋 義秀 0:58.483
2位 マティアス・ドルダラー 0:58.800
3位 マルティン・ソンカ 0:59.071
4位 ピート・マクロード 0:59.196
5位 マット・ホール 0:59.212
6位 マイケル・グーリアン 0:59.227
7位 カービィ・チャンブリス 0:59.526
8位 ベン・マーフィー 0:59.854
9位 二コラ・イワノフ 1:00.002
10位 フランソワ・ル・ボット 1:00.200
11位 ミカ・ブラジョー 1:00.532
12位 ファン・ベラルデ 1:01.446
13位 ペトル・コプシュテイン 1:01.920
14位 クリスチャン・ボルトン 1:03.130
予選トップの座は室屋選手が獲得した。2回の飛行を58秒前半に揃え、安定した速さを見せた。
2位のドルダラー選手は今回も予選上位に座る。3位には2連勝中のソンカ選手が滑り込んだ。一方で今シーズン安定して予選・決勝で上位を維持していたグーリアン選手が6位に落ちている。
前回エンジン回転数違反で失格となった室屋選手、油圧による制御が行われる部分については抜本的な対策を行えず、使用する回転数を下げる事で対応したとの事。これはエンジン最大出力を使えないということだ。にもかかわらずトップタイムを刻んだという事実から、室屋選手の技術が不足しているエンジン出力を補って勝負に挑んでいることがうかがえる。
コプシュテイン、ボルトン両選手は予選で2度ともペナルティを受けたタイムで、真の実力が現れていない。しかし、今シーズン結果が出ていない2選手。波乱を起こす可能性は高くない様だ。
【ラウンド・オブ・14】
風は少なく、パイロンの揺れは少ない。絶好のレース日和だ。
・ヒート1
ル・ボット選手は垂直ターンの直後、ゲート6で機体を次のパイロンに向けて傾け始めるのが早過ぎた。インコレクトレベル(2秒ペナルティ)で1:01.674。ホール選手はルボット選手の結果を踏まえて攻めを控えたと云いながらも0:59.282と速いタイムで勝ち上がった。
・ヒート2
今回予選11位とあまり奮わなかったブラジョー選手。安定したターンの中、VTM(垂直上昇ターン)ではペナルティギリギリの飛行も見せたが、1:01.096とタイムは伸びない。マクロード選手は、離陸も急激な上昇を行わず(エネルギーロスもギリギリに抑え)ゲート2でコンパクトなターンを見せ0:59.491、ノーペナルティ同士の戦いで1.6秒もの差を付けて勝ち上がる。
・ヒート3
イワノフ選手は1:01.124に終わる。グーリアン選手は、2ラップ目のVTM(垂直上昇ターン)の降下で次のゲートを見失ったか降下が間に合わず、シンキング・イン・ザ・ゲート(10度以上の降下角度でゲート通過)。2秒のペナルティは0.8秒しかない予選タイムの差を吹き飛ばし、1:02.480。
今年毎戦ファイナル4に残り続けた年間チャンピオン最有力候補が、緒戦でまさかの敗退。
・ヒート4
先攻ベラルデ選手、2ラップ目に入るゲートで、インコレクトレベル。1:01:935に終わる。後攻のソンカ選手、盤石の安定感で0:59.756で勝ち上がる。
・ヒート5
マーフィー選手、今季は下向きウイングレットで挑む。1周目をソツなくこなし、2ラップ目に入るところで、僅かに早く機体を傾けインコレクトレベル。更にVTM終わりのシンキング・イン・ザ・ゲート。合計4秒のペナルティに1:03.592に沈む。
後攻チャンブリス選手は4秒のアドバンテージを受け、飛行ラインを試しつつ、1:00.208で勝ち上がる。
・ヒート6
今シーズン、ラウンド・オブ・14を1度も突破出来ていないコプシュテイン選手は1:00.853やや、精彩を欠いたタイム。後攻ドルダラー選手はスモークが出ず1秒のハンデを背負うが1ラップ目で挽回…したが、攻め過ぎてしまいインコレクトレベルで合計3秒のペナルティを受け、万事休す。1:01.410で敗退した。
・ヒート7
ボルトン選手、不足している機体性能を補うが、VTM進入時にクライミング・ザ・ゲート(2秒ペナルティ)を受け 1:04.214に終わる。後攻の室屋選手は余裕を残しての1:00.592。飛行直後のインタビューでは「未だ1秒程度タイムを詰められる」とコメントしている。また、ミカ・ブラジョー選手がファステスト・ルーザーとして勝ち上がった。