●Day3(9/15 Sat) 6SS 134.20km/全行程306.08km
この日最初のSS8 Ysilbede1(34.24km)で首位のヌービル組はSS8でフロントサスペンションを破損、ダンパーがボンネットを突き破るアクシデントを起こし、デイリタイアを喫する。オストベルグ組も駆動系のトラブルでデイリタイア。トップがいきなり脱落する大波乱が起きる。
トップタイムはオジェ組、2位は22.5秒差でタナク組、3位にミケルセン組。総合でもオジェ-ミケルセンのヒュンダイ1-2となる。
SS9 Datca1(10.70km)もヒュンダイのミケルセン組がトップタイムを奪うが、タナク-ラトバラのトヨタ勢も2,3番手につける。目下最大のライバル脱落でトップに立ったオジェ組だが、SS走行中にフィエスタWRCのステアリングアームにトラブルが発生し、トップから18秒遅れの7番手に止まった。
SS10 Icmeler1(20.40km)では、オジェはリエゾン(一般道の移動区間)中にメカニックのアドバイスを受けマシンを修復、遅着となるもSS10のTCに辿り着いた。60秒のペナルティを受けた後、SS10でトップタイムを奪い、総合4位に踏み止まる。SS2位のミケルセン組が総合首位に返り咲く。36.3秒差で2番手にタナク組、その2秒差でラトバラ組のトヨタ勢が付ける。だが、30秒を超える差は容易には詰められない間隔だ。
一方、順位を6位迄上げていたラッピ/フェルム組はコース脇にスタックしてしまい、デイリタイアとなった。全てのファクトリーチームでリタイアが発生し、完全にサバイバルラリーの様相を呈している。
SS11 Ysilbede2(36.00km)からオジェの挽回…が期待されたが、コースアウトを喫し痛恨のデイリタイアとなる。SS開始時点で再びトップに立ったミケルセン組だが、i20WRCに駆動系トラブルが発生し、スピン。更にFR駆動となっており28:54.5に止まる。トップのタナク組から、1分42.2秒遅れの11番手にとどまったミケルセン組は4位に陥落する。ラトバラも2位に浮上し、トヨタは1-2体制を築く事に成功する。
また、序盤から上位を守っていたブリーン/マーティン(シトロエン C3 WRC)組に車両が全焼するアクシデントが発生する。シトロエン勢は速さを見せつつも全車をトラブルが襲い、上位争いから後退した。
SS12 Datca2(10.70km)はラトバラ組がこのイベント初のステージ優勝。2位は再出走のエバンス組、3位にタナク組が入る。総合でも3位に浮上したパッドン組を引き離し始める。SS13 Icmeler2(20.40km)はタナク組がステージ優勝を飾り、波乱のデイ3を締め括った。
2位のラトバラ組は13.1秒差。3位のパッドン組とは57.1秒差と大きな差を付けた。4位スニネン組は更に2分11.7秒後方、5位ミケルセン組は更に3分3.2秒後方。オジェ・ヌービル・オストベルグの各車は翌日の再出走を目指し、修復が行われる。一方、軽傷見とられていたラッピのヤリスWRCは翌日の再出走迄の修復が困難との判断でリタイアとなった。
●Day4(9/16 Sun) 4SS 35.53km/全行程135.77km
前日デイリタイアを喫したヌービル組・オジェ組が大量ペナルティを受けて再出走。ヌービル組は1位から37分遅れの総合18位,オジェ組は21分遅れの12位で、SSの距離が短く上位入賞は望めないものの、再出走で最終SS:パワーステージのボーナスポイント獲得を目指す。
SS14 Marmaris1(7.12km)ヌービル組がトップ、オストベルグ組が2位、オジェ組が3位と再出走組が上位を占めた。
SS15 Ovacik(8.04km),SS16 Gokce(13.25km)とオジェ組が意地の連続トップ、以下オストベルグ-タナク-ラトバラ-エバンス-パッドンと「1-6位の顔ぶれが全く同じ」と云う事態が起きたが、総合1位のタナク組,2位のラトバラ組の差は17秒。3位のヘイデン・パッドン/セバスチャン・マーシャル組(ヒュンダイ i20クーペWRC)との差は1分越え。トラブルが起きない限り上位の順位はほぼ確定した。しかし、オジェとヌービルが後方から猛追している。
SS17 Marmaris2(7.12km Power Stage)ボーナスポイントの獲得が可能なパワーステージだ。出走5番目のヌービル組が記録した4分59.5秒はそれ迄トップだったオストベルグ組を11秒上回る圧巻のタイムを叩き出す。
8番目のオジェも1.6秒ヌービルに届かない。10番目のミケルセン組は11.9秒遅れでオストベルグにも届かない。11番手スニネン組、12番手パッドン組の上位陣もヌービル・オジェに届かない。13番手ラトバラ組は5分6.0秒で2人には届かなかったが、総合2位以上を確定した。14番手のタナクは…5分3.4秒で3位に滑り込むと総合優勝を確定した!
タナク/ヤルベオヤ組はフィンランド・ドイツに続く3連勝。2位にはラトバラ/アンティラ組が入り、トヨタは復帰後初の1-2フィニッシュを達成した。3位にパッドン/マーシャル組(ヒュンダイ i20クーペWRC)が今季初表彰台を獲得した。6位にはRC2クラスのへニング・ソルベルグが喰い込んだ。へニングは2003年ワールドチャンピオンペター・ソルベルグの実兄。
最終成績
1. オット・タナク/マルティン・ヤルベオヤ(トヨタ ヤリスWRC) 3h59m24.5s
2. ヤリ‐マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ(トヨタ ヤリスWRC) +22.3s
3. ヘイデン・パッドン/セバスチャン・マーシャル組(ヒュンダイ i20クーペWRC) +1m46.3s
4. テーム・スニネン/ミッコ・マルック(フォード フィエスタWRC) +4m10.9s
5. アンドレアス・ミケルセン/アンデルス・ヤーゲル(ヒュンダイ i20クーペWRC) +7m11.7s
6. へニング・ソルベルグ/イルカ・ミノア(シュコダ ファビアR5) +13m40.6s
7. ヤン・コペッキー/パベル・ドレスラー(シュコダ ファビアR5) +18m25.2s
10. セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア(フォード フィエスタWRC) +20m51.2s
12. エルフィン・エバンス/ダニエル・バリット(フォード フィエスタWRC) +22m09.0s
16. ティエリー・ヌービル/ニコラ・ジルソー(ヒュンダイ i20クーペWRC) +38m46.5s
リタイア
エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム(トヨタ ヤリスWRC)(SS10 アクシデント)
クレイグ・ブリーン/スコット・マーティン(シトロエン C3 WRC)(SS11 アクシデント)
ドライバーズランキングは優勝のタナクが優勝(25pt)+パワーステージ3位(3pt)で28ポイントを獲得、164ポイントとなった。パワ-ステージ1位で5ポイントを獲得したオジェは総合10位(1pt)にも辿り着き、6ポイントを加算。同ステージ2位のヌービルは4ポイントを獲得。トップ2は可能な範囲内でタナクの急接近に抵抗を見せたが、タナクはオジエ(154ポイント)を逆転、ヌービル(177ポイント)に次ぐランキング2位に浮上した。首位のヌービル迄13ポイントと射程距離に納めた。
総合2位のラトバラ組はパワーステージ4位(2pt)で合計20ポイントを獲得、合計75ポイントでランキング5位に浮上した。ラッピ組はノーポイントだが88ポイントでランキングは4位を維持している。
メイクスランキングは前戦終了時、首位(244ポイント)であったヒュンダイは3,5位(15+10)の25ポイントを獲得し279ポイントにとどまる一方、トヨタは1,2位(25+18)の43ポイントを獲得し、合計284ポイントで首位に躍り出た。フォードは4,6位(12+8)で244ポイントで3位、シトロエンは7,8位(6+4)で169ポイントとなっている。
WRC次戦は、第11戦ラリーGB(グレートブリテン)イギリスのウェールズ北東部のディーサイドをホームタウンとして10月4日から7日にかけて開催される。かつてRAC(Royal Automobile Club)ラリーという名で呼ばれ、長い歴史を誇るイベントだ。ウェールズ中部から北部にかけての森林地帯や丘陵地帯のグラベルロード(未舗装路)にSSが設定される。
秋のウェールズは天候が変わりやすく、雨が降ると路面はぬかるみ滑り易く、霧が発生する可能性が高い難易度の高いラリーだ。
持てる最高の条件が使用出来ない中でも、サバイバルラリーを勝ち抜いたTOYOTA GAZOO RACING。速さだけでなく、強さが備わった事は疑いようが無い。Wタイトル獲得の現実味を帯びてきたTOYOTA GAZOO RACINGから残り3戦、目が離せない。
(川崎BASE・写真:TOYOTA GAZOO RACING/Jaanus Ree/RedBull ContentPool)