【ルノー・メガーヌRS試乗】4コントロールで得られる魔法のグリップに高出力エンジンの組み合わせは「最強」

コーナーに向かってステアリングを切り込んで行くと、その瞬間からグイッとインに向かって一気にクリッピングポイントを目指してクルマが曲がって行きます。

こうした動きをするクルマは数多くありますが、そのときにロールがほとんど起きず、4輪のグリップ感が安定した状態になっているのはかなり珍しいものです。ガチガチに足まわりを固めたプロダクションレースカーにスリックタイヤを付ければこうした動きになるでしょうが、そうしたときに起きる乗り心地の悪さや、破綻したときにどうなるかわからないピーキーな感じは一切なく、余裕を持った上で別次元の安定感のあるコーナリングを実現しています。

リヤタイヤが同位相に操舵される際もステアリングの切り始めでは一回、逆位相に操舵され、一気に曲がる力を発生させてから、同位相に操舵してスタビリティを高めるというロジックが組まれているので、速度が高くなってもその機敏さには変わりはありません。

そしてなによりも素晴らしいのが、攻める走りをやめて流すと乗り心地がいいのです。メガーヌRSは、ショックアブソーバーの中に小型のショックアブソーバーを内蔵するHCCを採用したことで、乗り心地とダンピング性能を両立しているのです。

279馬力のエンジンは必要にして十分以上のパワーがあります。Dモードのままでアクセルを踏みきって加速すると、6500回転をポイントとして“バフッ”と大きな音を立てながらシフトアップします。加速感は強力で、グイグイと加速。あっという間に法定速度に達してしまうので、自制心を保って運転しないと点数が危ないでしょう。もし自制心を保つ自信がない方は、速度を自由に設定できるスピードリミッターを装備していますので、それを利用しましょう。

残念なのはクルーズコントロールが付いていて、自動ブレーキも装備するのに、追従式ではないこと。440万円の車両本体価格で、得られるパフォーマンスには文句はないのですが、日本の交通事情を考えるとやはり追従式のACCは欲しい装備です。デュアルクラッチ式ミッションとのマッチングや耐久性との兼ね合いがあるとは思いますが、どうにか克服していただきたい部分です。

そうそう、タイトルに史上最強って書いたのですが、じつはさらにエンジンのパワーアップをしたメガーヌRSトロフィーがデビューしています。このRSトロフィーで、ふたたびニュルの最速タイムが塗り替えられるかも知れません。

(文/諸星陽一 写真/平野 学)

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この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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