今大会では哀川翔さんがドライバーとして3度目の挑戦をし、総合16位で完走を果たしています。ちなみに哀川翔さんが初出場の際コ・ドライバーをつとめたのは、新井選手と同じく日本を代表するラリードライバーの奴田原文雄選手でした。
その他、普段はサラリーマンや公務員、学校の先生など様々な人がお盆休みと有給休暇をやりくりしながらこの競技に参加しています。トップグループの熾烈な争いをよそに、自分自身のベストタイムと完走を胸にゴールを目指し参加する人、実はかなり多いのです。そして病みつきになった人も多数。
基本的にタイを起点に近辺諸国がゴールとなる事も多いAXCRは、毎日街から街へと移動するものの宿泊地は毎晩ホテルなので、競技はかなりワイルドではありますが夜はちゃんとベッドで寝られます。そんな「旅」の要素も多分にあって、そこもAXCRの魅力なのかもしれません。
10年以上この競技の取材を続ける筆者にとっても、ソコはとても魅力的です。東南アジアの山の中、時にはジャングルに入り込み、観光では絶対に行くことのないであろう集落で1日撮影をし、夜はホテルでディナー。日本人の筆者にとっては車で地続きの隣国に入国するプロセスだけでも新鮮です。
毎日過酷な戦いを続けるトップグループの選手と、過酷な非日常空間で自分との戦いに挑む選手、様々な参加者が夜になれば同じホテルで食事をとり、翌日また各々の戦いに向かう。そんな日々の繰り返しが大会期間中続きます。
ちなみに、4輪に限って言えば、毎度毎度日本メーカーの車が勝ち続けるものの、23年の歴史の中で日本人ドライバーでその頂に立った者はたった1人です。かつてのF1パイロットもグランプリライダーもPWRC(かつてあったプロダクションカーによるWRC)の世界チャンピオンも誰もまだその頂点には立っていません。敷居低く誰にでも挑戦権はあるものの、その頂点は実はとても高かったりするのです。それがアジアクロスカントリーラリーという競技なのです。
(高橋 学)