「日産ヘリテージコレクション」のコレクションホール全体に漂うのは、ちょっと懐かしい「旧車」の香りです。鼻孔をくすぐるこの香りだけでビンテージカー好きなら昇天してしまうことでしょう。
そして、市販車以上にオーラを放っているのが、モータースポーツ参戦車両の数々です。
レプリカではなく、実際使われた車両だけが放つそのオーラ。実際にレースを観に行った方ならなおさら、手を触れる距離に憧れのマシンがあることに感動することでしょう(実際に触れてはいけません)。
それでも、展示にあたっては専門のレストア集団である「再生クラブ」の手を経ているマシンもあります。ただその際も、ことさらきれいにレストアするのではなく、当時そのままの雰囲気をキープさせるという職人技が発揮されています。
とくにクラッシュを経たラリーマシンなどは、ボディパネルの凹みや外れて垂れ下がってしまったランプまでも参戦当時のまま。灯火類を失ってしまうと失格となってしまうのでむりやりワイヤーで固定するという荒々しさですが、それはあえてそのまま。
これは「フィニッシュコンディション」といって、ゴールした時点の状態をキープするという掟に則ったものだそうです。
実際は参戦することのなかったケンメリのレース仕様に、史実に忠実にS20エンジンを載せるなど、これまで日産が紡いできた正確なアーカイブ構築もまた、ここ座間の「再生クラブ」が支えているようです。
(写真:井上 誠 文:畑澤清志)
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日産ヘリテージコレクション|見学のご案内
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