トヨタとスバルの戦いはどうだったか?【ニュルブルクリンク24h】

■11回目の挑戦、SUBARU STI NBRチャレンジはトラブルが頻発

一方、今年で11回目の挑戦となるSTI NBRチャレンジ。過去に2011/2012年、2015/2016年に2度のSP3Tクラス2連覇を達成しているが、昨年は熱問題によるトラブルや他車とのクラッシュ、そして最後は炎上でリタイヤしているが、今年は王座奪還がミッションとなっている。マシンは2014年からVAB型WRX STIで戦っているが、2018年モデルは、昨年課題となった熱対策や空力改善を中心にアップデート。エンジンは熟成のEJ20ターボに更なる改良が施され、シャシーやサスペンションなど見えない部分には、「次世代SGP」の要素技術も盛り込まれている。

そんな万全の態勢で挑んだニュル24時間だが、夜間に行なわれる予選1回目に9分7秒581を記録しダントツでクラストップを記録しているが、9分切りを目指して開発されたマシンであることを考えると……。

昼間に行なわれる2回目の予選に賭けたが、パワステのオイル漏れが発生し、タイムを出せないまま終了となった。

決勝では予選で起きたパワステトラブルの再発、決勝時もコース各所で計測されている音量規制対策による緊急ピットインなど、細かいトラブルが襲い、順位を大きく下げる。それ以降は順調で深夜から雨が降り始めるが、参戦車両唯一のAWDのメリットを活かしGT3を上回るタイムを記録しながらの走行でクラストップに戻った。

赤旗中断時からレースが再開、残り1時間を切った所でエンジントラブルが原因でストップ。ストップした場所がグランプリコースカット入口だったことが幸いし、オフィシャルによってピットロードまで運ばれた。懸命のトラブルシューティングにより、チェッカー20分前にコース復帰。トラブルまでに2位以下を大きく引き離していたため、順位に変動はなく、クラストップのままゴール。

いくつものトラブルを克服し、目標だったSP3T王座奪還を成し遂げたことでチームもファンも喜びひとしおだと思うが、これまでSTI NBRチャレンジのずっと見てきた筆者は「これでいいのか?」と思う部分があるのも事実である。ちなみに最後に起きたエンジントラブルの原因は、赤旗中断時に雨が電気系統に侵入したことが原因のようだが、量産車はそんなトラブルは起きない。STIが量産車での挑戦にこだわるのは「量産技術の証明」だが、今回は何かが足りなかった。

総合順位は62位、実はこの順位は2016年のリタイヤを除くと、2008年の初参戦以来最も下位だ。筆者は24時間トラブルフリーで完全勝利、総合順位もGT3の間に割って入った18位だった2015年を知っている。それを考えると、STIには「勝ち方」にもこだわってほしいと思っている。

辰己英治監督はレース後、筆者に「トラブルが起きた時は、『まさか?』と思いましたが、よくよく考えていれば防げたこともあった……と反省ばかりです。致命的な機能の故障ではないですが、どんな小さな問題でもニュルでは大問題になってしまう。今回はそこがシッカリとできていなかったと言う反省点が残りました」と言うコメントを残している。

また今回、SUBARUからエンジン/シャシーのエンジニア2名も訪れており、極限の開発現場の重要性を感じたようだ。

結果だけ見ると明暗を分けた二つのチームジャパンだが、どちらもエンジニアリングの部分ではニュルに負けた……。どちらも納得できるレースではなかったはずなので、来年はもっと強くなって戻ってきてほしい。

(山本シンヤ)