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■TOYOTA GAZOO RACING、12回のチャレンジは「道」と戦う
では、日本勢の戦いはどうだったのか? 今年で12回目の挑戦となるTOYOTA GAZOO Racingは2015年から3年に渡り参戦してきたレクサスRCでの参戦に区切りをつけレクサスLCでの挑戦だ。彼らの挑戦は、ニュル24時間と言う極限状態の実戦テストを通じて、「人を鍛える」と同時に「クルマを鍛える」ことである。つまり、ライバルと戦うだけでなく 「道」自身と戦っているわけだ。
このLC、将来の市販車への採用を目指す先行開発技術が多数盛り込まれている。V8-5.0Lエンジンは内部にTNGAの要素技術、サスペンションも形式こそ同じだが実車を見てみるとアームやジオメトリーは異なる。更に車両重量は2トン近い量産車に対して1380kgまで軽量化。これはレースに不必要な部品の取り外しや材料置換だけでなく構造的な工夫もあるのだろう。更に安全運転支援のトライも行なわれており、電子ルームミラーやAピラー周りの死界をなくすためのアイデアなども盛り込まれている。先行開発は量産開発と比べるとリアルワールドでの実証がしにくいが、実戦投入することで開発スピードも上がる効果もあるそうだ。
新モデルでの挑戦のため車両開発/製作は早めにスタートされ、テストは国内/ニュルを含めて8000kmを行なったと言う。
予選トラブルフリーでGT3マシンに迫る速さを発揮、2014年のレクサスLFA以来となるトップ30予選獲得も期待されたが、惜しくも32位。しかし、決勝は一転してトラブルが多発。序盤のブレーキトラブルからミッショントラブル、そしてエンジントラブルでコースストップと、ニュルは新参者に数多くの試練を与えた。誰もが「テストで何も起きないのに、なぜニュルで?」と感じたそうだが、これが現実である。実はレース前に関谷チーフメカニックから「不安なのがウエット、国内でもニュルでもほとんどテストできていない」と聞いていたが、実は今回のエンジントラブルは雨が原因であった。気になる部分はニュルでは明らかになってしまうのである。
97LAP走って総合97位、結果だけみると惨敗である。しかし、彼らはここがゴールではなくここでの経験が、もっといいクルマにするためのノウハウやヒントになる。そう考えると、ここ数年のニュル24時間の挑戦はスムーズなレースマネージメント&好成績だったが、2018年は改めてニュルの厳しさを学べた年になったと言えるだろう。