余計なラインを廃したボディサイドは、張りのピークを明快にしたS字断面で、一旦凹面とした面はボディ下部で再度凸面を作り、非常に豊かな表情を作ります。ボディ全体のシンプルさを損なわないフロントフェイスは、横方向への流れにより、わずか1650mmの全幅をワイドに演出。一方、ガーニッシュ一体の滑らかなリアランプは先進感を打ち出します。
「見せる内装」としたインテリアは、ソフト感を与える特別塗装を施したインパネのボリューム感が見所。サイドサポートとヘッドレストを一体化したシートも同様で、当時のトヨタの先進的な内装作りが際立ちます。
若者向け商品の研究から始まった企画は、そのままの勢いに乗って「プロダクトアウト」のかたちをとりました。しかし、160万円台という価格を含め、決して浮き世離れした商品にならなかったところが肝です。
ガルウイングという飛び道具を使いつつ、たとえば前後ランプの形状などを始め、いい意味での「量産車的」なまとめ方ができたのは、当時のトヨタの底力を感じさせるところです。
●主要諸元 トヨタ セラ(4AT)
形式 E-EXY10
全長3860mm×全幅1650mm×全高1265mm
車両重量 930kg
ホイールベース 2300mm
エンジン 1496cc 直列4気筒DOHC16バルブ
出力 110ps/6400rpm 13.5kg-m/5200rpm
(すぎもと たかよし)