【日産・スカイライン公道試乗】プレミアムセダンらしい直進走行時の安心感の高さを実感するも、見え隠れする改善点

しかしながら、気になる点があったのも事実。2点ほどあります。

1つ目は、回転半径の大きさです。

ダイレクトアダプティブステアリングにより、ロックトゥロック(ステアリングを右に目いっぱい切ってから、反対の左側に最大限切ること)は2回転と非常に少なく、交差点では非常にきびきびとして軽快な操舵感ではあったのですが、Uターンをするときの回転半径が大きいのです。数値でいうと最小回転半径は5.7m(200GTt全車。HEV 2WDのみ5.6m)。

例えば、競合車であるBMW3シリーズは5.4m、ベンツCクラスは5.2m、レクサスISは5.4m、ちなみにフーガは5.6m。この0.1〜0.3mの差は、蔑ろにはできない大きな差です。交差点の様な大きさのコーナーであれば、フル転舵は使わないので、とても楽なのですが、駐車場のような小回りを利かせたいところでは、ステアリングは切れているのに「あれ?これしか曲がらないの?」とついつい言ってしまった位、クルマの大きさを改めて感じてしまいました。ただ、ホイールベースが長い分、後席が広くて居住性が良いなど、相反する性能をとったのでしょうが、競合車と比べてみても残念な部分に感じます。

2つ目は、ステアリングの滑らかさに不釣り合いな「粗い乗り心地」です。

これは、ダイレクトアダプティブステアリングの操作感があまりにも滑らかであるため、比較的引き締められた乗り心地が不釣り合いだという意味です。不整路面を走った際にステアリングから受ける入力は、ごくわずかなのですが、シートに座っている身体が上下左右に揺すられてステアリングを切ってしまう、そんなシーンがありました。せめてステアリングに合わせた足回りの硬さに変更ができるとよいのですが。

ちなみに、Type SPモデルになると、ダブルピストンショックアブソーバーが標準装備され、乗り心地は改善となりますが、現行ベンツCクラスはエントリープレミアムクラスで世界初のエアサスペンションを採用、BMW3やレクサス ISも電子制御ダンパーを採用するなど、振動吸収の制御デバイスを織り込んできているのがトレンドです。廉価でオプション設定がなされていれば、なおよいかと感じます。

V37スカイラインは、もはや国産車の平均レベルを優に超え、世界のTOPクラスと肩を並べ、部分的には追い抜くレベルにいます。とくに、このダイレクトアダプティブステアリングとアクティブレーンコントロールは、長く乗れば乗る程にその価値が分かってくるはず。今後は、より高度な運転支援技術(プロパイロット)の採用を望みます。

(吉川賢一)

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この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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