国産/輸入車、新車/旧車が同じ土俵で、さらに徹底的に内外装をカスタムされて並べられる東京オートサロン。そんな異種格闘技イベントの2017年度、ダイハツブースはあるスペシャルモデル群によって現場はもちろん、ウェブやSNS上でも図抜けた盛り上がりを見せていました。
ブーン シルク、トールら4機種をベースにスポーティな内外装にして、ボディを鮮烈な赤と黒に塗り分けた『スポルザ』シリーズがそれです。
スポルザはそれ単体としての出来も良かったのですが、一定の年齢を超えた世代にとってはその色によって『ダイハツ・シャレード・デ・トマソ・ターボ』(1984年登場の2代目シャレードベースのスポーツ・スペシャル。イタリアの名門『デ・トマソ』とのコラボによって生まれたもので、赤と黒のイメージカラーが有名)が重なって見えたのでした。
そのスポルザたちの中でも最も来場者にインパクトを与え、「いつ売る?」「いくら?」と市販要望が高かったブーン シルク版がこのたびエクステリアキット『ブーン スポルト パッケージ』(フロントロアスカート一体型フロントバンパーガーニッシュ・リヤロアスカート一体型リヤバンパーガーニッシュ・サイドストーンガード・フロント&リヤフェンダーガーニッシュ・フロント&リヤドアアンダーガーニッシュ・サイドデカール……のセットで2018年1月12日全国のダイハツ販売会社で発売。価格はオープン価格。スポルト専用本革風シートカバーとゴールドのレイズVOLK RACING CE28N・15インチアルミホイールは別売り)になって発売されることが決定しました。
そこで今回、このスポルザ&スポルトの内外装を作り上げたダイハツのデザイナー2名に登場していただき、ショーモデルと量産モデルの両方に込められた思いを語ってもらいました。話すのはデザイン部第1デザイン室ECDグループ課長の芝垣登志男さんと同エグゼクティブリエゾンデザイナーの米山知良さんです。
芝垣さんは特定非営利活動法人・日本自動車殿堂(JAHFA)の2016-2017 カーデザインオブザイヤーを受賞したムーヴキャンバス等を手がけています。米山さんはムーヴやタントの『カスタム』モデルを手がけた後に先行開発デザイン担当となった人物。2人とも東京オートサロン出展車両担当へは自ら志願して就いたといいます。
--東京オートサロンに出展されたブーン・スポルザは誰の目にも「ああ、ダイハツらしい!」と思える仕上がりです。こう思える背景には、たとえば赤と黒の塗り分け方にダイハツ車共通の……はっきり言えばシャレード・デ・トマソ・ターボやミラTR-XX(1985年に初代モデル登場のスポーツモデル。やはり赤と黒がイメージカラー)における黄金比やルールのようなものがあり、それを当てはめたということでしょうか?
米山「いえ、そういう意図的な方法は使っていない……と言いますか、使わないようにしたのです」
芝垣「ブーン・スポルザを作るときに我々は確かに、80年代のホットハッチと呼ばれた自社車両たちを念頭に置きました。それらのイメージカラーであった赤と黒の印象は圧倒的で、ショーモデルにもそこから採り入れたのは事実です。しかしダイハツの、乗って楽しいモデルの共通項・核となる部分で一番大事なのは何かというと『自分は今、スペシャルにあつらえられた1台に乗っている』と思える”特別感”なんですね。それはこういう形にすればOK、とかこの色(や塗り分け方)にすべき、ということでは達成できなくて、ベースモデルに対して『どれだけ気を使って差別化されているか』によってこそ成し得るものなのです」
米山「デ・トマソはもちろん、ミラTR-XXでも単に色を変えるだけでなくボディ各部に立体感あるパーツを多く追加しています。それらは必ずしも大きな造形ではありませんでしたが、車両トータルで見るとベースモデルから一気にジャンプアップするよう計算されていました。丁寧に手間をかけて特別感を演出していたのです。だから今回のブーンでエクステリアを作るときも『よく見ればここまで手を入れているんだ』と感心してもらえるようなデザインを心がけました」
芝垣「過去のモデルを振り返っても、デ・トマソ・ターボにも白&銀の2トーンがあり、2代目デ・トマソ(1993年登場。4代目シャレードがベース)では赤の単色というのもあって、色だけが重要ではなかったのです」
米山「(うなづいて)それに、実はもっと『デ・トマソ流』にするなら、(ボディ色だけでなく)エクステリアもさらに似せてホイールもカンパニョーロにするなどしてレプリカ風にするということも可能です。でも今回のモデルで表現したかったのは『当時のスポーツモデルが豊富な頃のダイハツの再現』なので、あえて特定モデルのイメージ反復は避けました」