80~90年代の日本車からグッドデザインを振り返るシリーズ。第19回は、ファッション感覚の都市型四駆として「ライトクロカン」の先駆けとなったコンパクトRVに太鼓判です。
80年代、パジェロなどクロカンブームを牽引した本格四駆は悪路走破性が評価軸。1988年、1.6リッタークラスという空白地帯に、オンロードでの走行性能を重視した「ライトクロカン」を打ち出したのが初代のエスクードです。
ボディの基本的なシルエットは極めてシンプルなRVでありながら、ピラーの細さが乗用車感を演出。とくに、フラッシュサーフェス化されたリアピラーは軽快で、都市型四駆のイメージを醸成します。
大きく張り出した前後のブリスターフェンダーは、曲面を取り混ぜることで無理なくボディにとけ込み、力強さと洗練さが絶妙なバランスを保ちます。同時に、前後フェンダーのエアダクトが独自のアクセントに。
フロントは、ランプ周囲の枠と横桟の組み合わせが、どこか南欧的な雰囲気を表現。一方、リアランプは先のブリスターフェンダーに沿って外側に配置され、機能性とともに安定感を形成します。
大型二眼メーターを用いた機能的なインパネと、スポーティなバケットシートを組み合わせたインテリアはライトクロカンの面目躍如。メインカラーのダークブルーも、重厚感と同時に都会的なファッション感覚を演出します。
スズキを代表するジムニーのイメージを反映させつつ、まったく異なる個性を生み出したことは見事。当初からコンバーチブルを設定し、手軽なオープンカーとして販売したのも秀逸です。
自社では最大の排気量となる新型車であっても、決して無難に走らず、他の何モノにも似ない個性を追求。スズキらしいフットワークの軽さは、すでに当時から発揮されていたのです。
●主要諸元 スズキ エスクード ハードトップ(5MT)
形式 E-TA01W
全長3560mm×全幅1635mm×全高1665mm
車両重量 990kg
ホイールベース 2200mm
エンジン 1590cc 直列4気筒OHC
出力 82ps/5500rpm 13.1kg-m/3000rpm
(すぎもと たかよし)