【東京モーターショー2017】クルマの将来は「この数年が鍵」になる ─ ZF社が考える未来像とは?

大きなトレンドとなっているのが「電動化」です。ドイツから始まった「ディーゼルゲート」スキャンダルによって、欧州ではディーゼル車両の登録台数が大幅に減少しているそうです。

9月のフランクフルトモーターショーでは、会場入り口付近にグリーンピースが立てた「ディーゼル車のお墓」のモニュメントが話題になりました。また、英国、フランスほか多くの国々が2040年、またはそれよりも早い段階でのエンジン付き車両の販売禁止を検討しています。

今や世界最大の自動車市場となった中国では、政府の主導によって電動化が進んでいます。新車購入時に必要なライセンス(ナンバー)プレートの発行には、電気自動車(EV)が優遇されます。また、北京をはじめとする大都市ではタクシーのEVへの切り替えが進む見込みです。

このように世界中で「Eモビリティ」が進むのは疑いのないトレンドであるとレイク氏は語っていました。

もう一つの流れである自動運転は、今後「fast evolution(=ハイスピードの進化)」は進んで行くものの、「revolution(=革命)」は起こらないだろうとの見解でした。どのタイミングでどこの市場がどのレベルの自動運転導入に至るのかは、各国の法整備の問題もあり単純にテクノロジー主導で進むことができないというのがその背景にありそうです。

「レベル3」までの運転支援機能は比較的短期間のうちに普及する可能性が高いとしながらも、完全自動運転やそれに近いレベルの運転支援機能の実現は、まだしばらく先の事になるとの意見だそうです。人工知能(AI)のさらなる開発と、特に事故発生時におけるHD(高精度)マップの正確性が技術面での課題の例として挙げられていました。

レイク氏は最後に、「automated driving starts with safety(=自動運転は安全から始めるべき)」と締めくくっていました。

昨今、自動運転と言うとその便利さが強調されがちですが、優先させるべきは安全性。予防安全機能充実の結果として運転をクルマに任せる事ができるようになる、というのが本来の形かも知れません。

また電動化も、クルマをガソリンや軽油ではなく電動モーターで走らせる事が目的ではなく、電力の供給手段も含め、真に二酸化炭素排出量の少ない交通手段の普及を慎重に検討する必要があるでしょう。

私たちの生活を便利で楽しいものにしてくれるクルマですが、ZFの言う「これからの数年」で、どのような姿になって行くか、我々も注意深く見守らなければなりませんね。

(Toru ISHIKAWA)