つまり、出荷前の完検が省略されていたわけではなく、検査員が正規のスタッフではなかったことがリコールの原因。そのため、生産に起因する大きな問題が出てくるとは考えづらいといいます。たしかに完検というのは制動力や速度計などが正常範囲に収まっているかを確認する機械を通すことがメインなので、そうした検査をクリアしていれば機械としては問題がないといえそう。今回、問題となっているのはハードウェアではなく、ルール遵守の部分であると西川社長は認識しているようです。
さて、現在の自動車生産工場ではトレーサビリティがしっかりと確立されていて、部品の不具合によるリコールでは車体番号で対象かどうか識別できるほどなのですが、今回の完検に関する一件では、全数対象となっていることに疑問を覚えます。完検の実施者についてはトレーサビリティで判別できないのかもしれません。そうした背景などについては、第三者を含む調査チームによって明らかになることが期待されます。
なお、調査結果が出てくるのは、およそ1か月後。10月25日に開幕する東京モーターショーの期間内になりそうですが、「東京モーターショーへの影響は最小限に抑えたい」というのが西川社長の弁。外野からすると自粛という文字も浮かびますが、日産の西川社長は、東京モーターショーを主催する日本自動車工業会の会長も務めていますから、イベントに水を差すわけにはいかないということでしょう。
一方で、日産自動車としての広報・宣伝活動については、近々予定されていたメディア向け試乗会を中止するなど自粛の動きが感じられます。その影響が、モータースポーツ活動などまで広がるのか、ファンにとっては気が気でないかもしれません。
(文:山本晋也 写真:門真 俊/日産自動車)
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