【ネオ・クラシックカー グッドデザイン太鼓判!】第7回・新たな軽のスタンダードを生んだ、スズキ・ワゴンR(初代)

80〜90年代の日本車からグッドデザインを振り返るシリーズ。第7回は、自動車デザインの常識に一切とらわれなかった、新時代のトールワゴンに太鼓判です。

ごく一般的な2BOXが主流だった当時の軽乗用車に対し、RVやミニバンではなく「もっと使いやすい道具のようなクルマがあるべき」というコンセプトでで、1993年にスズキが提案したのが初代ワゴンRです。

自転車が積める1680ミリもの全高でありながら、後ろ上がりのルーフや、リアパネルの高い位置に設けた「折れ」により、前進感のある独自のプロポーションを実現。

フロントは、安易な横長を避けた縦型のランプによって広く高い顔を作り出し、車高にマッチ。逆に、リアランプはバックドアに干渉しない下部に収めつつ、動きのあるリアパネルやバンパーで商用車感を払拭しています。

キャビンは、しっかりしたボディ色のピラーでワゴンとしての力強さを出し、ウインドウ周りには異例に深い段差を設けてパネルの厚みを表現。面取りは、フロントランプ周囲にも及びます。

サイドは、パンと張った面が非常に高い質感を醸し出し、水平のプレスライン1本だけで明確なアクセントを作っています。とくに、1枚ドアの右側パネルの質感は圧巻です。

キースケッチは、当時若手の中川一郎氏による先行案がそのまま採用されたといいます。流行は追わず、本物の道具感を追求することで、個性は後から付いてくるという氏の発想は、いい意味で日本車離れしています。

シンプルでありながら高い質感を持つ。道具感がありながら商用車っぽくない。どこか欧州車っぽい初代のオリジナリティは、デザイナーの高い志と明快なテーマ性の証なのかもしれません。

●主要諸元 スズキ ワゴンR RX(5MT)
型式 E-CT21S
全長3295mm×全幅1395mm×全高1680mm
車両重量 740kg
ホイールベース 2335mm
エンジン 657cc 3気筒SOHC12バルブ
出力 55ps/7500rpm 5.8kg-m/5500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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