セダン復権なるか? 新型カムリは機能の価値からエモーショナルな価値へと変わった

トヨタから、新型カムリがフルモデルチェンジにより登場しました。

カムリの歴史は長く、誕生はセリカの4ドア版として、セリカ・カムリという名前で80年に生まれたのでした。

セリカと言えば、当時のトヨタを、日本を代表するスポーツカー。FRシャシー=後輪駆動のそれをベースにするからには、セダンと言え走りの良さを特徴とする4ドアセダンだったわけです。

しかし、82年にカムリは当時の開発主流の波を受けFF=前輪駆動へとガラリと変貌します。

FFとするからにはそのメリット=居住スペースを大きく取れることを最大限に活かし、当時のトヨタ車内で事実上の最大級セダンであるクラウンにも負けないような後席足元空間、トランクルームサイズを得ました。スポーツセダンから、上級ミドルセダンとなったのです。

これがカムリにとって大きな変革となり、北米で15年連続ベストセラーとなるようなグローバルでのトヨタ大ヒット商品へと成長していくのです。

しかし、大消費地である北米の顧客を満足させ続けると、どうしても日本人にとっては大きくなり、場合によっては大味に映っていったかも知れません。

もはや日本ではハイブリッドのみ、といった絞り込みも行われました。

そして、今度のカムリ。TNGAによるプラットフォーム、エンジン、電子系などを得て、トヨタとしてのもっと良いクルマに生まれ変わりました。プラットフォームからエンジンも。ゼロから作り上げたわけです。

ミッドサイズビークルカンパニープレジデントの吉田守孝氏は、カンパニー制となったこと。カムリはトヨタ社内でミッドサイズビークルカンパニーに属して開発されます。これはトヨタブランドの45%を売り上げるというまさにトヨタの中核組織。

その中で、仕事のやり方が変わったことで、車両軸の考えかたで意思決定が早くなったことと、各自が情熱を持って取り組むことができた、といいます。

ラインオフ式には、サプライズで豊田章男社長も登場し、場内は笑顔で溢れ、「今日の笑顔をクルマにコメ、お客様にお届けしよう」と誓い合ったといいます。

豊田章男社長はデザインの方向性を決める開発の段階で、この中で一番カムリらしくないデザインにすればいいんだよね。機能の価値からエモーショナルな価値へと変わっていかなければならない、という意味合いです。

かつてカムリはホワイトブレッド=食パンと表現されたそうです。つまり、必要だけれど、楽しむものではないという捉えられ方だったわけです。

開発責任者の勝又正人氏は、今度のカムリは、カッコよくて走りも楽しくワクワクドキドキさせる車両に仕上がったといいます。

実際にステアリングを握るのが楽しみです。

そして、発表会の最後のフォトセッションにおいて、吉田氏、勝又氏の両名は記者からのリクエストに答えた面白ポーズを披露していただき、「これまでとは違う」ということを十分にアピールしていました。

ただし、いいクルマとヒット商品が必ずしも同じとは限りません。セダンの復権はなるのでしょうか? 新型カムリは、カローラ店、トヨペット店、ネッツ店の3チャネルと販売網を増やし販売していきます。

(clicccar編集長 小林 和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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