【ニュルブルクリンク24時間】SUBARU STI WRX 炎上の影で何が起きた?

ニュルブルクリンク24時間レースから一夜夜が明けました。

スバルSTIチームのSUBARU WRX STIのあまりのショッキングな結末に、ドライバー、チーム関係者そしてファンの皆さんの誰もが現実のものとして受け入れられてないのかもしれません。

この結果をいかに反省し、来年に繋げるのか。ここがリベンジへのカギとなることは間違いありません。
ファンの皆さんも、それを期待していることでしょう。

今回のレースのポイントを上げてみましょう。

①想定外の気温の高さ
ニュルといえば防寒具が必須のイベントですが、今年はTシャツでも観戦できるほど。
スタート時の気温は27℃、路面35℃。

人間はもちろん、マシンにとっても想定外です。

まさかこんな高温の中での走行が続くとは。
そして、レース終了30分前まで雨が降らないことなど、誰が予想したでしょうか。

最初のピットイン時にエンジンの再始動に手惑い、3分ほどロスする場面がありました。
このトラブルは、ガソリン温度上昇により燃料パイプ内で気化してしまうパーコレーションが原因と思われます。
また、油温と水温の上昇がマシンのあらゆるパーツにダメージを与え、ペースが上げられない状況に陥りました。
タイヤのグリップにも大きく影響したようです。

レース前にグリッドに向っているとき、首位のギャラリーもTシャツの人が多く、チーフメカニックの坂田さんも袖をまくっています。影が濃いことでも、日差しが強いことがわかりました。

②ライバルチームの『WRX STI包囲網』とレベルアップ

昨年を思い起こせば、予選で速さを見せたのはAUDI TT RS2でした。スバル/STIチームは実は昨年も厳しい戦いが戦前に予想されていましたが、時間が経過するごとにAUDI勢にトラブルが相次ぎ、自滅して行ったのでした。

それに対し、今年はまさに逆の展開でした。
AUDI勢は9分前半を出せるドライバーをきっちり4人揃え、昨年のようなタイムのバラつきをなくし、ウイークポイントをつぶしてきました。LMSチームもスバルをきっちり研究し、マシンの速さにもみがきをかけてきたと言います。

そしてGAZOO RacingのRC。彼らは対スバルというよりも、昨年の雪辱に燃えていました。なんとしても完走して結果を残す。そして、目指せ優勝。若きチーフエンジニア茶谷氏の「みんなで一つの結果に向かうことだけを心掛けた」というレース後のコメントには、重みを感じました。

ちなみに、SP3Tクラス優勝を飾ったLMSモータースポーツのエース、クリスチャン・シュミッツ選手をはじめ、AUDI LMSチームは9分台前半をレース中に出せる選手を揃えました。

③ヒュンダイのまさかの突撃

空が明るくなってきた朝6時、マルセル選手が走行していたときのこと。
グランプリコース内でラップ遅れのマシンをコーナーアウト側からパスして加速に入ったその瞬間、ボディ左側に直線的にヒュンダイi30Nがまさかのヒット。映像を見ると、まるで真っ直ぐぶつかってきたかのような衝撃のシーンでしたが、レース後の取材ではブレーキトラブルだったとの情報も。
レース後、辰己テクニカルアドバイザーは、「理解できないクラッシュでしたが、前に追いつきたい一心でレースをしていましたし、マルセルも一生懸命でした。もし余裕があれば、あそこで無理してパスしなくてもいい状況だったかもしれません。そう考えると、チームの焦りが出てしまったのかもしれません」と、WRX STIのレース状況も原因のひとつではなかったかと分析しています。

「完全に抜いたあとにヒュンダイがぶつかってきました。本当に残念なクラッシュでした。これが原因であばら骨を痛めてしまい、そのあとのスケジュールをキャンセルしなければなりませんでした。クルマは走るためには問題のない状況でしたが、ドアが壊れて開いたままになってしまい、テープで固定しなければならなくなりました」とマルセル・ラッセー選手。

マルセル選手にも、WRX STIとってにも痛いクラッシュでした。

④炎上

誰もが目を疑うシーンでした。
ドライビングしていたカルロ・ヴァン・ダム選手はクラッシュの修復により左側のドアがガムテープで開かなくなっていたため、燃えている方向の右側のドアから脱出せざるを得な状況となり、姿が現れるまでに時間がかかり心配されました。

辰己テクニカルアドバイザーは「原因はいろいろ考えられますが、帰って分析しなければ今ははっきりとは言えません。クラッシュが原因でどこかにクラックが入って油類が漏れたのかもしれませんし、今はなんとも。まずはカルロが無事で良かったです」とコメント。

レース後のミーティング。ディーラーメカニックのみなさんの奮闘むなしくリタイアという結果には、さすがに落胆の様子。

前を走るライバルを追うためにベストを尽くしたことが、さらにマシンにダメージを与える結果になっていたのかもしれません。

いずれにしても、スバル/STIチームの皆さんは、ドライバ、メカニック、エンジニアともにベストを尽くしたことは事実です。
そのベストを尽くした内容が正しかったのか、本当にベストを尽くせていたのか、ベストを尽くし始める時期は正しかったのかなどなど、今後検証して、ぜひとも来年に活かしていただきたいと思います。

スバル/STIファンのみなさんもご期待ください!
(HYPERREV/SUBARU SPIRT編集部 渡辺文緒)

■レース結果
<総合>出走160台/完走109台
総合順位/no/チーム名/マシン/周回数/ベストラップ(周)
1/29/AUDI Sport Team Land/AUDI R8 LMS/158/8:22.129(112)
2/98/Rowe Racing/BMW M6 GT3/158/8:23.919(112)
3/9/AUDI Sport Team WRT/AUDI R8 LMS/158/8:22.423(91)
4/42/BMW Team Schnitzer/BMW M6 GT3/158/8:23.321(99)
5/1/Mercedes-AMG Team Black Falcon/Mercedes-AMG GT3/157/8:25.659(118)
6/31/Frikadelli Racing Team/Porsche 911 GT3R/157/8:27.279(41)

<SP3Tクラス>出走12台/完走10台
クラス順位/no/チーム名/マシン/周回数/ベストラップ(周)
1/89/LMS Engineering/Audi TTRS2/145/9:10.005(116)
2/170/Toyota Gazoo Racing/Lexus RC/145/9:13.676(2)
3/87/MSC Sinzig e.V. im ADAC/Audi TT/137/9:28.233(114)
4/92/HYUNDAI N/HYUNDAI i30N/135/9:54.409(84)
5/93/Lubner Motorsport/Opel Astra OPC Cup/126/9:51.890(29)
6/94/Opel Astra OPC Cup/126/10:09.175(109)
7/91/Opel Astra J OPC/122/10:04.003(113)
8/86/Team Mathol Racing e.V/Seat Leon Super Copa/122/10:00.816(84)
9/95/HYUNDAI N/HYUNDAI i30N/109/9:57.913(76)
10/85/Ford FOCUS/93/9:57.951(60)
11/90/SUBARU STI/SUBARU WRX STI/126/9:12.265(39)
12/96/Lubner Motorsport/Opel Astra OPC Cup/117/9:58.996(115)